• テキストサイズ

【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第37章 ◇第三十六話◇兵士達【調査兵団入団編】


「ひとりでよくやった。あとは、おれ達に任せな。」

ゲルガーさんは、私の頭をひと撫ですると立ち上がった。
そして、あの地獄の中へ再び戻るために、私に背を向ける。
彼もまた、苦楽を共にしてきた大切な仲間を壁外調査初日に失っている。
それだって、きっと今回が初めてではないはずだ。
何度も何度も大切な命を奪われ、それでもどうして、彼はこんなに真っすぐに戦えるのだろう。
私を助けて、優しい言葉をかける余裕なんてあるんだろう。
私はー。

「ゲルガーさん…。」

数歩先で振り返ったゲルガーさんに、私は訊ねた。

「もう…、分からないんです…。
 私は今…、何をしてるんですか…?」

ゲルガーさんの優しさが残る気がする髪を痛いくらいに握って、私は頭を抱える。
ハンジさんは言っていたっけ。
私なら調査兵団の役に立てるから入団してほしいんだって。
でも、今、私の目の前で繰り広げられている地獄が、教えてくれるのだ。
無駄だと。どんなに抗ったところで、人間は、巨人には勝てないのだと。
私はなぜこんなところにいるのだろう。
人類の役に立つどころか、友人を死なせたのに。
いつか巨人は、すべての壁を壊し、私の大切なものをひとつ残らず食らうのだろう。
それなら、私はここで、何をしているのだろう。

「そんなの決まってるだろ。」

自信満々なゲルガーさんの声に、私は思わず顔を上げた。
いつの間にか顔を出していた太陽が、ゲルガーさんの顔を照らす。
眩しくて目を細める私に、彼は言った。

「生きてるんだよ、おれ達は。」

彼は走っていくー、悲劇を繰り返すだけの悲しい地獄へ。
精鋭兵に巨人の大群を任せてこの場を離れろというエルヴィン団長の指示が響く。
今この時、誰が正しくて、誰が間違っているのか。
ただ、風を切り空を飛ぶ兵士達の姿が、太陽に照らされ、ひどく眩しく輝いて見えたのだけは確かだった。
/ 1058ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp