【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第34章 ◇第三十三話◇酔っぱらいの願い【調査兵団入団編】
大聖堂の屋根から見張りをしている数名以外は、ほとんどの調査兵が早いうちに眠りについた。
時々交代をしているけれど、ほとんど1日中続いた移動と緊張でみんな疲れているのだろう。
そんな中、夜中と呼ばれる時間になっても緊張からなのか眠れない私は、見張りの交代を終えた後からずっと大聖堂の時計台の上にいた。
とっくに壊れたそれは時を刻むことを忘れて、壊れたそのときのまま針はきっと二度と動かない。
人間と同じだーと思った。
でも、それは、肉体が壊れてしまった死んだ人間のことだろうか。それとも、大切な人を失って心が壊れてしまった生き残った人間だろうか。
「夜空からは、この世界はどう見えますか?」
今夜、新しく増えたであろう星に訊ねてみたけれど、いつものように返事はない。
昨日までの彼らなら、豪快に笑って、下品な冗談を飛ばしてくれたはずなのに。
誰も死なせない兵士になりたいー、それはやはり無謀でしかないのだろう。
だって、人類最強のリヴァイ兵長ですら、犠牲は必要だと言っているのに。
でも、それでも、私はまだ希望を捨てられない。
人類が巨人を駆逐して平和を取り戻すためには、本当に多大な犠牲が必要なのだろうか。
その平和のために、たくさんの誰かを地獄に落としてもいいのだろうか。
そんな権利、誰にあるのだろうかー。
たとえ、綺麗事だと悲しい顔をされても、鼻で笑われても、私は誰も泣かせたくないのだ。