【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第32章 ◇第三十一話◇壁外調査初日の洗礼【調査兵団入団編】
「付近の巨人はあらかた遠ざけた!!開門30秒前!!」
壁上の駐屯兵が叫ぶ。
どうやら、援護班はしっかりと仕事をこなしたらしい。
私が震える手で手綱を握ると、テュランが嬉しそうに鳴いた。
朝からウキウキ気分のテュランが羨ましい。
今からお散歩にでも出かけるつもりなんだろう。巨人のいる世界へー。
「いよいよだ!!これよりまた人類は一歩前進する!!
お前たちの訓練の成果を見せてくれ!!」
開門が始まった。
いよいよだ―。
「第57回壁外調査を開始する!前進せよ!!」
エルヴィン団長の号令の下、唸るような威勢を上げた兵士達が地獄の門をくぐり、死を覚悟して走り出す。
この中の何人が、帰ってこれるのだろう―。
「大丈夫だよ、。」
「分かんないよ、そんなの。」
調査兵団の大群に気づいて寄ってきた巨人達を援護班が討伐していく。
彼らの援護を受けられるのは、廃墟となった街を抜けるまで。
そこから先は、立体起動装置を使えない広い草原ー。
「大丈夫!夢みたいに、私がを助けてあげるからっ!ね?」
力強い言葉をくれたルルを見てようやく、私は、彼女の瞳の中にも恐怖と不安が揺れていることに気がついた。
そうだ。
怖いのは、私だけじゃない。
生きて帰りたいのは、私だけじゃない。
「ハンジさん、一旦、離脱します。」
「はぁッ!?」
「ルル、テュランをよろしく…って言っても好き勝手行くと思うけど。」
驚くハンジさん達に告げて、私は、近くの建物にアンカーを飛ばした。
「ちょっとちょっと!!!どこに行くの!?」
「身長差なんかに負けないんだって気合入れてきます!!」
降りてきなさいとハンジさんが悲鳴みたいな声を上げているのが聞こえたけれど、私は振り向かずに巨人の元へ飛んだ。
だって、聞こえたから。
好きにさせてやれってリヴァイ兵長が言ってくれていたのが。
不思議だけれど、リヴァイ兵長が私の味方だってわかった途端に、目の前で恐ろしい笑顔を浮かべる大きな顔が、全く怖くなくなった。
「行ってきます!!」
巨人を討伐して、私は援護班に敬礼した。
誰よりも早く走って行っていたテュランをルルが連れてきてくれて、盛大に謝った。