【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第30章 ◇第二十九話◇相応しいパートナー【調査兵団入団編】
私は、たじろいだ。
どう反応すればいいのか分からない私にペトラは続ける。
「がどんどん実力と技術を身に着けて、焦ってたの。
ハンジさんのお気に入りだからとか、そんなんじゃないって分かってる。
ただ私が…、弱かっただけ。性格悪いね、私。」
困ったように眉尻を下げるペトラは、自分を嫌っているように見えた。
「そんなことないっ!ペトラはいつも優しくて、まわりを見てて、
私がツラいときも、気に掛けてくれてたってハンジさんから聞いたよ。
今、一緒に頑張ろうって言い合える仲間が私にも出来たのは、ペトラがいたからだよ。」
私はペトラの手を握って、まっすぐに目を見つめた。
必死だった。
ペトラの姿が儚くて、いつもの彼女とは違っていて。
なんだか、ペトラが、死を予感しているような気がして。
まるで、こうして話せるのはもう最後みたいな気がして。
そう見えてしまったのは、なにもペトラの儚いオーラのせいだけではないのだろう。
私も、壁外調査に不安を感じているのだと思う。
必死な私にペトラは驚いたようだったけれど、小さく首を横に振ると弱弱しく言った。
「…違うよ。私はいつも臆病で、だから必死に訓練しただけ。
もっとすごい先輩達がいたのに、その人達を犠牲にして、こうして生き残っちゃってー。」
「生き残っちゃったんじゃない!」
思わず大きな声が出て、私も驚いた。
ペトラもビックリしたようだった。
「私は経験なんて全くないかもしれないけど、これだけは分かるよ。
今、ペトラが生きてるのは、その勇敢な人達が、ペトラに生きててほしかったからだって。」
「…っ。」
「生き残った人が、それが悪かったみたいに言ったらダメだよ。
それに、私は、ペトラが生きててよかった。出会えてよかったよ。」
ペトラが今はまだ出来ないのなら、命を落とした先輩兵士達に、私が代わりに感謝すると言えば、彼女は嗚咽を漏らして泣き出した。
何があったか詳しくは言わなかったけれど、ツラいことがあって、誰かを妬んだり、悔しがったり、自分の中の悪い感情がぷくりぷくりと生まれる度に、自分を嫌いになって行って、どうしようもなかったと言った。
すごくわかる気がして、私はペトラを強く抱きしめた。
しばらくして、ペトラは口を開いた。
もう、そこに涙はなくて、意志の強い瞳だけが、私を見ていた。