【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第29章 ◇第二十八話◇友人の応援【調査兵団入団編】
パンを4つ入れた紙袋を持って、私は兵舎の門をくぐった。
今日は早めに昼食をとったせいか、お腹がキュルキュルと悲しそうに泣いている。
「あれ、出かけてたの?」
宿舎に入ってすぐに声をかけてきたのはペトラだった。
シャワーを浴びて部屋に戻るところだったようだ。
「散歩から帰ってきたら、私の取り分なくなっててね。
これを買ってきたところ。」
私は紙袋を持つ手を上げて見せた。
サシャへの怒りが込み上げてくる。
確かに、散歩から帰るのが遅くなった。
でも、まだ夜と呼ぶには早い時間だったし、少し食堂に行くのに遅れただけだ。
それなのに、私が行ったときには、もうパンは1つも残っていなかった。
私のために残っていたはずのパンも含め、すべてをサシャがたいらげたせいだ。
ストヘス区へ出向していたことを知っていた新兵達は、まだ私が帰ってきていないと思ったらしい。
悪気はなかったのだろうが、食堂にやってきた私を見た途端に脱兎のごとく逃げ去ったサシャが、どうしても確信犯に思えて仕方がないのだ。
「アハハ、サシャらしい。」
恨み節を聞いて、ペトラがおかしそうに笑う。
談話室へ紅茶を作りに行こうとも思っていたことを話すと、一緒に行くと言うので話しながら向かうことになった。
訓練のことや壁外調査のこと、私がテュランに置いてきぼりにされたこと、オルオがまた舌を噛んだことを面白おかしく話ていれば、あっという間に談話室に着いてしまった。
今夜も日頃の疲れを癒したい調査兵達が、お喋りやちょっとした遊戯を楽しんでいる。
「これ、この前、ティーカップ割って迷惑かけちゃったときのお詫びも込めて。
好きなのをもらってくれるかな?」
淹れたての紅茶をテーブルの上に置いた私は、紙袋を広げて中が見えるようにしてペトラの前に出した。
驚いた後、気を遣わなくていいというペトラに、お詫びをすると約束したからと言えば、嬉しそうにお礼を言われた。
こういう素直なところが、ペトラの可愛いところだと思う。素直に受け止めてくれるから、こっちも嬉しくなる。
「じゃあ~、ん~、どれも美味しそうだなぁ…。
これにしようかなっ。」
「オッケ~。」
ペトラがパンを選んだのを確認してキッチンに入った私は、皿を3枚用意して戻った。