【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第28章 ◇第二十七話◇好きになってもいい人ですか?【調査兵団入団編】
「ごめんね、眠っちゃってて。」
手綱を木から解きながら謝ったけれど、テュランは、大変ご立腹な様子だった。
唸り声をあげて、少し休憩したら散歩をするという約束を守らなかった主人を責める。
今度は必ずたくさん散歩をするから、と必死にテュランを説得するがこちらを向いてもくれない。
参った。壁外調査前に親睦を深めようと思っていたのに、それどころか嫌われてしまった。最悪だ。
このままでは、怒りのまま振り落とされて、壁外でひとりぼっちで迷子になってしまうんじゃ―。
「どうしましょう…、リヴァイ兵長。」
真っ青になって、リヴァイ兵長を見たけれど、スーッと目を反らされた。
そんな、あんまりだ。
泣き出しそうな私に、ついにリヴァイ兵長が折れた。
ため息を吐いたリヴァイ兵長は、テュランに勝手な約束をする。
「今度の壁外調査から帰ってきたら、林檎をたらふく食わせてもらえ。」
「え!?」
確かに馬にご褒美として林檎をあげることもある。
でも、林檎は高級品で、私の給料ではたらふくなんて―。
嬉しそうな鳴き声を上げて、鼻先で頬を撫でてきたテュランに、それはダメだなんて言えない。
暴れ馬と勝手な約束をしたリヴァイ兵長は、さっさと馬に乗って行ってしまう。
その後姿を眺めながら、私は自分の唇にそっと触れた。
さっき、目が覚める直前、私の唇に何か触れなかったか。
それはもしかして、リヴァイ兵長の唇だったんじゃないのか。
どうして、手を握っていたんだろう。
リヴァイ兵長はいつも通りで、何を考えているのか全く分からない。
それとも、私はただ寝ぼけていただけー?
「おい、早くしろ。」
リヴァイ兵長が後ろを向いた。
すぐに返事をし、私はテュランの背中に乗る。
「…生きて帰らせてよ。」
鬣を撫でると、もちろんだ!とばかりにテュランが前脚を上げた。
よし、やる気があるのはとてもいい。
でも、戻ってきてくれないだろうか。
ビックリして背中から落ちた主人を置いていくのは、やめてください、本当に―。