【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第28章 ◇第二十七話◇好きになってもいい人ですか?【調査兵団入団編】
またあの夢だー。
白い砂の絨毯と地平線の向こうにまで続く大きな湖。
そして、隣に座って私の手を握る誰か。
触れたことがあるような気がする感触を確かめるように、握りしめる手に力を込めた。
そうすると、その手も応えるように握り返してくれた。
やっぱり、私はこの手を知っている。
隣にいてくれるだけでホッとする、この安心感も。
誰だっけ。知っている人のはずなのに、頭がボーっとしていて分からない。
眩しい光が、誰かの顔を隠す。
顔を覗き込もうとする私の髪を、その人は優しく撫でた。
それが気持ちよくて、なんだか眠たくなる。
幸せってこういうことを言うんだー漠然と、そんなことを思った。
そっと閉じる瞳、近づく2人の距離。
そして―。
唇に何かが触れたのを感じて、私は目を覚ました。
「起きたか。」
唇が触れるか触れないかの至近距離、そこにリヴァイ兵長の顔があった。
切れ長の2つの瞳がすぐそこにあって、何が起こっているのかわからず目を見開く私を見下ろしている。
「あの…?」
「なんで、てめぇが寝てるんだ。起こせと言っただろ。
夜になっちまうじゃねーか。」
そういえば、リヴァイ兵長越しに見える空はもう真っ赤を通り越して紫色になろうとしている。
どうしてここにいるんだったっけ。
ぼんやりとする頭で、状況をなんとなく思い出していく。
あれから、いつの間にか私も眠っていたようだ。
「いつまで寝ぼけてんだ。いくぞ。」
リヴァイ兵長に起こされて、さっきからずっと手を握っていたことに気が付いた。
そういえば、何か夢を見ていた気がするのだが思い出せない。
この手が関係あったような気がするのだけれど―。
「おい、いつまでそうしてるつもりだ。」
握りしめている手をじーっと見て記憶を辿っていると、リヴァイ兵長に窘められた。
ようやく恥ずかしいことをしていることに気が付いて、慌てて手を離して謝る。
リヴァイ兵長の言う通り、寝ぼけていたらしい。
手が離れたリヴァイ兵長は、私を見ることもせずに、馬の元へと行ってしまった。
チクリと胸は痛んだが、テュランの機嫌も気になったから、リヴァイ兵長の背中を急いで追いかけた。