【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第3章 ◇第二話◇不本意な兵士達の戦い【調査兵団入団編】
トロスト区奪還作戦はなんとか成功した。
ピクシス司令は、人類が初めて巨人に勝利したと言っていたが、私はどうしてもそうは思えなかった。
あの人間兵器という訓練兵がトロスト区の外門にあいた穴を塞ぐまでの間に、大勢の兵士が死んだのだ。
彼らにも、敵前逃亡とみなされても構わないから、どうしても会いたい家族や大切な人がいたのに。彼らを待つ家族や恋人、友人がいたのに。もう永遠に会えなくなってしまったというのに、どうして手放しで喜べるだろうか。
「これよりトロスト区内に残った巨人の掃討作戦に移る!」
ピクシス司令から兵士達に新しい任務が言い渡された。
壁外調査から戻った調査兵団の兵士達と一緒に、トロスト区に残った巨人を1体残らず殺せということらしい。
「民間人だと大嘘ついて逃げようとしてた割には、頑張ってるじゃねぇか。」
「はぁ…。」
あの時、制服を持ってきた勘違い兵士が、私の肩に手を乗せた。
彼なりの労いの言葉らしいが、まったく嬉しくない。
彼が心臓を捧げると誓った民間人である私が、こんな地獄に放り込まれてしまった諸悪の根源であることを、想像もしていないのだろう。
普段ならば言い返してやりたいところだっただろうが、さっきまで続いていた巨人との対戦で消耗しきった心と身体には、そんな元気は残っていなかった。
「これから、本格的に巨人と戦わなきゃならねぇ。」
「…そうみたいですね。」
「お前、さっき、逃げ遅れた兵士を助けに戻っただろ。」
責めるような言い方にドキりとして顔を見上げると、兵士が厳しい表情でこちらを見下ろしていた。