【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第3章 ◇第二話◇不本意な兵士達の戦い【調査兵団入団編】
私が助けたのは、トロスト区奪還作戦前に率先して敵前逃亡を図ろうとしていた兵士だ。
作戦に乗り気ではなかったせいなのか、技術のせいなのか、その兵士が飛ばしたアンカーが壁にうまく刺さらずに、地上に落ちてしまったのだ。
すぐに起き上がり、もう一度アンカーを飛ばそうとしている彼の後ろには巨人が一体迫っていた。
そのとき、私は既に壁の上にいて、彼と壁までの距離は数メートル。
気づいたときには、私はアンカーを飛ばし、今まさに兵士を食おうとしていた巨人を討伐していた。
助けよう―なんておごったことを考えたわけじゃない。
気づいたら動いた、というのも違う気がする。
私はただ、たった数メートルが生死を分けるのだと思うと怖くなっただけなのだ。
でも、そんな言い訳をするつもりもなく、何より、あの時のことを思い出しただけで震える身体を抑えるのに必死で、私は両手で身体を抱きしめた。
私を咎めようとした兵士が、大きく息を吐いた。
それは、ため息のようで、安堵のようにも聞こえた。
「仲間を大切に思うのは大事なことだ。
でも、そのために自分の命を捨てるような真似はもう二度とするな。」
「…はい。」
言われなくても、二度としない。
私だって命は惜しいし、何より、勘違いで兵士をやらされて死ぬなんて御免だ。
そう思った―はずだった。