【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第28章 ◇第二十七話◇好きになってもいい人ですか?【調査兵団入団編】
旧調査兵団本部とは反対方向から向かってきているということは、どこかに出かけていたのかもしれない。
「こんなとこで何してる。」
木陰までやってきたリヴァイ兵長は馬に乗ったままで、立ち上がって敬礼で迎えた私を見下ろす。
ストヘス区の出向に同行して以来だから、そこまで経っていないのに、なんだかすごく久しぶりに会ったような気がした。
「早朝、ストヘス区から戻ってきて、ハンジさんにお休みを頂いたので、
テュランとの親睦を深めるいい機会かと思って、お散歩に来て休んでたところです。」
答えを聞いたリヴァイ兵長は、小川で水を飲むテュランに視線を向けた。
「アレをもらったのか。」
アレ呼ばわりされたテュランは、鼻先を小川につけて遊びだしている。
「逃げたい私を無理やり巨人の前に運んでいくような
薄情で怖いもの知らずの馬をもらいました。」
そんな私のお願いも、ハンジさんは困った顔をしつつも受け入れてくれた。
そういう経緯で、私に与えられたテュランは、白というよりも黄金色の毛並みが綺麗な上官が与えられる種類の馬だった。
足の速さも体力もトップクラスのテュランに今まで誰も持ち主が現れなかったのは、彼の気性の荒さが原因だ。
誰の言うことも聞かず、自分の思うままに走り続け、時には上に乗っている人間を振り落としてしまう。
しかも、逃げるべきところで巨人に突っ込んでいくという無謀なことをやらかすため、今までずっと小屋の門番をしていた。名前の由来も、暴君から来ているくらいの筋金入りの暴れ馬。
ハンジさんからそんな紹介をされ、他の馬に変えてもいいと言われたけれど、私はテュランの手綱をとった。
誰も死なせない兵士になるために必要なのは、勇気だ。
上官の制止を受け入れるようなお利巧さんではダメなのだ。
テュランなら、弱虫の私の背中を押してくれると信じている。
「またハンジを困らせてんのか。」
小さくため息をついて、リヴァイ兵長は馬を降りた。
そして、テュランの手綱を結んだと同じ木に馬を繋ぐと、私の足元に腰を下ろして、木に背中を預けた。
「休憩だ。」
「そうですか。」
そう言って、私も腰を下ろした。
すぐ隣にいるリヴァイ兵長を見たくて、見れなくて。
リヴァイ兵長を視界の端に残したまま、私はよそ見をして小川を見る。
テュランがリヴァイ兵長の馬にちょっかいを出して、迷惑がられていた。