【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第27章 ◇第二十六話◇104期の新兵達【調査兵団入団編】
私がもし、兵士の家族なら、人類に心臓なんて捧げてほしくない―。
私の言葉を聞いて、アニが息を呑んだのが分かった。
私がアニだったなら、私の家族は幸せだったと思う。
だって―。
「アニはいい子だね。」
髪をクシャリと撫でると、アニは迷惑そうに文句を言ったけれど、その手を振りほどかれることはなかった。
それから、もう一度だけ対人格闘術を習って、私が投げ飛ばされた頃にハンジさんが迎えに来てくれた。
「ねぇ、アニ。」
ハンジさんの元へ向かう前に、私はアニに向き直って名前を呼んだ。
「なに?」
「帰ってきたら、一緒に買い物行こうよ。」
「は?なんで私が。」
「可愛い妹だから?」
「へー、知らなかった。」
「対人格闘術を教えてくれたお礼をさせてよ。」
「憲兵なんて暇だから付き合っただけだし。」
「約束ね。」
「だから、なんで。」
嫌とは言わないアニが、可愛い。
会ったばかりだけれど、会ったばかりの私のために真剣に対人格闘術に向き合ってくれた。
また、会いたいと思った。
「おまじない。」
「は?」
「絶対に生きててくれるアニとしか出来ない未来の約束。
ね?いいでしょ?」
「…嫌って言ったって、勝手に決めるんでしょ。」
「すごいね、さすが妹だね。」
可笑しそうに笑う私に、アニがわざとらしいため息を吐いた。
妹だなんて、そんなに心の距離が近くなったとは思わない。
まだ私達の間には遠い距離がある。
だって、アニは私に心を開こうとはしていない。
でも、少しずつアニと心を通わせていく。そんな未来への目標を作るのも、いい気がした。
私の勝手な都合。
「待って。」
帰ってきたら休みを取って会いに来ると告げて、さよならと背を向けた私をアニが呼び止めた。
振り向いても、アニはすぐに口を開かなかった。
でも、待っていれば、何か言葉が続くと思って、続きを促そうとは思わなかった。
思った通り、少しして、アニの口はゆっくりと開いた。
「せいぜい、死なないようにしなよ。」
私は笑顔を返した。
命を懸ける調査兵の仲間とも家族とも出来ない約束を、アニが受け止めてくれた。
私は、必ず帰って、アニにお礼をしないといけない。