【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第27章 ◇第二十六話◇104期の新兵達【調査兵団入団編】
だから、彼らとアニとのイメージにどうしても違和感があった。
「…一緒だよ。」
「え?」
「私はただ自分が助けりたいだけだよ。」
すっと私から目を反らして、アニは言った。
無表情のその顔は、なぜか泣いているように見えて―。
「偉いね。」
「は?」
表情の戻ったアニは、少し怒ったように私を見た。
「私はね、誰も死なせない兵士になりたくて、調査兵をしてるの。」
「…本当に調査兵になるやつはバカばっかりだね。」
「そうかも。」
クスクスと笑う私をアニは呆れたように見ていたけれど、バカみたいな私の目標を否定したりはしなかった。
だからやっぱり、私は、アニは優しいと思うのだ。
「でも、上官とか先輩にいつも言われてる。
生きて帰ることを目標にしろって。」
「だろうね。」
「私は今度の壁外調査で、他の誰かを助けられたとしても、自分が死ぬかもしれない。
そしたら…家族を泣かせるって分かってるよ。」
目を伏せると、足元にいくつもの小さな石が落ちていた。
私の命なんて、人類規模で見ればこの小さな石ころみたいだ。
そして、家族にとっては、唯一の宝石なのだと知ってる。
誰も泣かせない兵士になりたい、とハンジさんに言ったことがある。
でも、私はいつか、家族を泣かせるのだろう。
それは、私が調査兵として壁外に出たことを家族が知ったとき。
それは、私が調査兵として壁外に出て、そして、死んだとき。
私の志は、矛盾しているのだろう。
家族の命のために、家族を泣かせないために、調査兵団に入って、私はおそらくそう遠くない未来で家族を絶望に突き落とす。
その日までの、束の間で、偽りの平穏を家族に与えているだけだ。
「だから思う。アニを大切に思ってる人にとって、アニはとっても偉いよ。」
確かに人類に心臓を捧げる兵士としては、自分のために憲兵を選ぶのは間違っているのかもしれない。
でも、それの何が悪いというのだろう。
彼女は他の憲兵がしているように不正をして民間人の税金を懐に入れてるわけでも、誰かを傷つけているわけではない。
むしろ、その逆じゃないか。
自分を守るということは、自分を想う人達の笑顔を守るということになるというのに、それを誰に責める権利がある。
民間人が兵団服を着ているような私だから、そんなことを想ってしまうのかもしれない。
間違ってるのかもしれない。