【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第26章 ◇第二十五話◇愛の世界で生きてきた彼女【調査兵団入団編】
一見冷たそうなリヴァイの横顔に、ハンジは数日前のストヘス区への出向を思い出していた。
そもそも、を家族の元へ連れて行ってやろうとリヴァイが言い出すのも意外だった。
本当はハンジも、壁外調査の前に連れて行ってあげたかった。
突然、離れ離れで暮らすことになって、もしもそのまま永遠に会えなくなってしまったら、そんな悲劇はないだろう。
ただ、はそんな提案は、前にもそう言ったように拒否すると思ったのだ。
でも、は躊躇いはしたもののリヴァイの提案を受け入れた。
死ぬ前に―、調査兵団に入団して巨人に食われそうになるという経験をしてしまった彼女も、あのときそう思ったのかもしれない。
「は、愛されて育ったんだな。」
「そうだね。私も同じことを思ったよ。」
家族のために調査兵団に入団することを決めたは、調査兵団の中で浮いた存在になることもあったけれど、リヴァイの言った通り今ではたくさんの仲間に囲まれている。
調査兵団に入ってからは泣いている姿は見たことがないけれど、笑ったり怒ったりを自然に出来るは、今まできっと優しさに包まれて生きてきたのだろう。
だから、彼女も又、ごく自然に優しさという愛を仲間にふりまく。
そうして、お互いの間を隔てる凍っていた壁を溶かしていったように思う。
彼女を造るすべてが、愛で出来ているのだ。
でも、それを、リヴァイも気づいていたとは思っていなかったから、正直驚いた。
「同じ壁の中にいても、違う世界で生きてるやつもいるんだな。」
「え?」
「調査兵団に入れるべきじゃなかったのかもしれねぇ。
アイツの母親に会って、おれはそう思った。」
吐き捨てるように言って、リヴァイは部屋を出ていった。
その前にリヴァイが呟いた低い声を、ハンジはすべてをきちんと拾えていた自信はなかった。
でも、なぜか、苦しそうなその声が耳にこびりついて離れなくて、リヴァイが部屋を出ていったあともずっと、部屋の中に響き続けた。