【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第3章 ◇第二話◇不本意な兵士達の戦い【調査兵団入団編】
足の骨が折れて走れない母親と幼い少女を運ぶのに、立体起動装置はとても役に立った。
離れてしまわないように、自分の身体と母親の身体を落ちていた長い布で巻きつけて、なんとか抱きかかえて内門へと向かえば、既に住人の避難は完了した後だった。
まさかまだ残っている住人がいるとは思っていなかったようで、驚いた駐屯兵団の兵士達に促されて、内門の中へと入る。
「よろしくお願いします。」
怪我をしている母親と少女を救護班の兵士に引き渡し、頭を下げる。
まだ内門の外では兵士達が巨人と戦っているとはいえ、これでようやく一息つける。
ウォール・マリアのときのようにこの内門さえ突破されなければ、人類はまた、首の皮一枚繋がることが出来る。
(みんなはどこだろう。)
きっと助かっている―。
内門までの道のりで地獄を見てきてもなお、自分の家族や友人だけは大丈夫だと信じている。
まだ実感がないのか、現実を受け入れたくないのか。
おそらく、そのどちらもだろう。
「さぁ、お前はこっちだ。」
「え?」
家族の姿を探していると、駐屯兵団の兵士に乱暴に腕を引かれた。
みんなが、家族や友人の無事に安心して抱き合っていたり、反対に絶望して立ち竦む人達の横をすり抜け、なぜか兵士達が集まる場所まで連れてこられた。
そして、待っていろとだけ言って兵舎の中に入っていった兵士は、手に何かを持って戻ってきた。
「ほら、これに着替えろ。」
そう言って兵士から差し出されたのは、兵士の制服だった。駐屯兵団のもののようだ。
着替えを差し出されて初めて、自分の姿を客観的に見れば、砂埃で汚れているどころか、服のあちこちが破れている。
ロングだったはずのスカートも、かろうじてスカートとしての形を残しているだけで、驚くほどのミニになっている。
乱暴に腕を引っ張るから、すごく嫌なヤツかと思ったが、ボロボロの服を着た女を見て、着替えを用意してくれた優しい男だったらしい。