【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第168章 エピローグ
海の見える丘の上には赤い屋根の家が建っていた。
愛し合うふたりの新居として、少し前に建ったばかりのその家には、いつものんびりと穏やかな時間が流れている。
だが、今日の日だけは特別だった。
楽しそうな笑い声があちこちから聞こえるそこでは今、大切な人の幸せを祝福するためだけに集まった家族や友人達が、気の合う同士でお喋りをしながら、その時を楽しみに待っているところだ。
たくさんのバルーンやペーパーフラワーの飾りもハンジの手でどんどん増えていき、いよいよパーティー会場らしくなってきた。
くす玉も用意していたのだが、コニーがふざけて紐を引っ張ってくれたおかげで、少し前に盛大にお披露目してしまった。
そのため、残りの飾りつけをハンジに任せたモブリットは、ニファ達と一緒に新しいくす玉を慌てて作っている。
そんな中、漂ういい香りに誘われて、サシャがフラフラと向かったキッチンでは、主役である2人の母親達とアニが忙しく豪華な食事の準備をしていた。
早速つまみ食いを始めたサシャだったが、すぐにアニに投げ飛ばされ、首根っこを掴まれてリビングに強制帰還させられる。
ちょうど、アニがサシャをリビングの柱に縛りつけ終えたとき、鈴の音のチャイムが鳴り、大切な人の幸せを祝福するために新しい客が訪れたことを教えた。
「私が出るよ!」
「ありがと~っ!」
キッチンにいる母親達に聞こえるように言って、アニは玄関へと向かった。
母親達がよく働くいい娘だと感心していることを知らないアニは、まるで自分の家のように玄関の扉を開けた。
そこにいたのは、招待されたアニの同期が続々と集まる中、唯一まだ来ていなかったミカサとエレンだった。
「今日はおめでとう。」
「コレ、母さんが作った菓子なんだ。みんなで食ってくれってさ。」
「別に、あたしがめでたいわけじゃないから、本人達に言えば。
とりあえず、これは受け取っとく。ありがとう。お母さん達に渡しとく。」
相変わらず不愛想なミカサの祝福の言葉を、似たような不愛想な表情で交わしたアニは、エレンからお菓子の入った紙袋を受け取った。
まだ式までは少し時間があるのに、お腹が空いたとうるさいのが数名いる。
彼らにこのお菓子を渡して静かにしてもらうのもいいかもしれない。