【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第164章 ◇第百六十三話◇勝利の女神に敬礼を【運命の決戦編】
シガンシナ区。
鎧の巨人を追い詰めた後、超大型巨人であるベルトルトが入った樽が投げ込まれた。
彼が巨人化したら、戦況は一気に覆されるー。
そう危惧したハンジ達と同じくして、ベルトルトもまた、覚悟を決めているようだった。
それなのにー。
『ライナー…!ごめん、世界は混乱するし、敵どころか味方にも恨まれるかもしれない…!
それでも僕は、もうこの手を誰かを傷つけるために使いたくない…!
僕はやっぱり…、あの手を掴みたい…!』
鎧の巨人のうなじからボロボロの身体を出したライナーの元へやって来たベルトルトは、一度は巨人化しようとしたものの、子供が母親を求めるような泣き顔で叫んだ。
ハンジには、彼が何を言っているのか分からなかった。
でも、アルミン達は何かに気づいたようだった。
そして、ライナーもまた、ベルトルトの願いは届いたようだった。
瀕死の身体で、なんとか腕を伸ばして親指を立てたのだ。それは、ライナーも同じ気持ちだということを示していた。
そして今ー。
ベルトルトとライナーは、戦いを放棄し、人類に協力することを決めていた。
「ナナバ、彼らの拘束はしなくていい。」
ハンジが止めると、ナナバは心底驚いた顔をしていた。
彼らは戦いをやめてくれたが、それは危険じゃないかとミケやゲルガーは、反対してきた。
確かに、これが敵である自分達を油断させる彼らの作戦ではないとは言い切れない。
それにもし、今は本気で人類の味方になろうと考えていたとしても、いつ裏切るかも分からない。
それでも、ハンジは頑なに首を横に振った。
ベルトルトとライナーの心をとかし、人類の味方にしたのはだ。その彼女は、ユミルを地下牢に閉じ込めようとしたとき、お互いに協力し合うべきだと言って聞かなかった。
疑って、拘束して、憎しみを増やす方法では、未来は開けないのだとー。
結局、ユミルはハンジ達を裏切り、ライナーとベルトルトを逃がしてしまった。
でも、それでもー。
そんなの徹底的な優しさが彼らの心をとかしてくれたのなら、それに習うべきだと考えたのだ。
自分達はもう裏切る気はないけれど、心配なら拘束しても構わないというベルトルトとライナーの申し出すらも断って、ハンジは彼らを自由でいさせることを決定した。
理由を聞いたミケ達も、それ以上何かを言うことはなかった。