【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第163章 ◇第百六十二話◇また逢いましょう【運命の決戦編】
は巨人のいない世界を望んでいた。
誰もが平等に夢を見て、笑っている。そんな優しい世界を作りたいと言っていた。
だから、誰にも巨人になってほしくないと思っているようだった。
それで傷つく大切な人を見たせいだろう。
そしてたぶん、は、敵の命さえも見捨てられなかったのだ。
誰も、それが敵でも、巨人に食われてしまうのは、彼女にとってはとても悲しいことなのだろう。
だからきっと、たとえば、それが自分を救うためだとしても、は注射を打たれることを望まない。
だからきっと、彼女はー。
分かっていた。
分かっていたー。
「すまねぇ…!俺は…っ、分かってたのに…っ!」
が死ぬ気だということは気づいていた。
ちゃんと分かっていた。
あれだけ大切にしていた、結婚式のために伸ばしたいと言っていた髪をバッサリ切り落としたその時からー。
ここを最期の場所に決めたのだと、分かっていたのにー。
自分は、彼女の覚悟を受け止めて、背中を押すことしかしてやれなかったー。
地獄へと飛ぶための背中を押すことしかー。
「リヴァ…イ、へい、ちょ…。」
「…!?」
腕の中から消えてしまいそうな小さな声が聞こえてきた。
慌ててを見れば、いつだって自分だけをまっすぐに映し続けてくれた愛に溢れた瞳が自分を見上げていた。
血の気のない真っ白い顔は相変わらずだったけれど、それでも、はちゃんと自分を見ていてー。
「泣かない、で…。だいじょ、ぶ…。また、会え、るから…。」
力の入らない震える手が伸びて、リヴァイの濡れた瞳を拭った。
その手を力強く握りしめて、リヴァイはただ頷く。それしか出来なかったー。
「う、そ…、ついて、ごめんなさ…。」
「本当だ…っ、、俺を残して、死なねぇって…言ったじゃねぇか…!
俺は許さねぇぞ…!絶対にお前と生きて帰ってやる!どうにかして、助けてやるから俺を信じてー。」
「リヴァイ…、あいして…、る。」
この期に及んで、リヴァイはそれでも注射をに打ちたい思っていた。
そんなリヴァイの心を分かっているみたいに、はとても愛おしそうに言って、震える左手でリヴァイの頬を撫でた。