【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第161章 ◇第百六十話◇起死回生の作戦【運命の決戦編】
でも、今は普通の状況じゃない。
この極限状態で、最も大切なものは何かを考えられないと兵士ではいられない。
だから、リヴァイ兵長は、エルヴィン団長の夢や命よりも、人類の命を選んだのー。
「ちょうど今、7m級の巨人がこっちに向かってきてます。あれを討伐しながら誰よりも前に出るんです。
きっと、獣の巨人の狙いはリヴァイ兵長に集中するはずです。
そうすれば、新兵や精鋭兵の被害を最小限に抑えられます。」
「…だが、獣の巨人の討伐はどうする。それでは、リヴァイが獣の巨人に辿り着けたとしても
おそらく万全の状態では戦えないだろう。そうなれば、人類の負けだ。
獣の巨人は、リヴァイでないと倒せない。」
「分かってます。だから、獣の巨人はリヴァイ兵長に倒してもらいましょう。」
私が当然のように答えるから、精鋭兵達は驚いていた。
馬鹿なことを言うなと私を叱る声も上がる。
きっと、本当にリヴァイ兵長ひとりに全てを任せようとしたら、成功率なんて皆無に等しい。
そんなの、無駄に死んでくれと言っているようなものだ。
馬鹿を言うなと、私を叱る精鋭兵達の言う通りだ。
「エルヴィン団長、私はー。」
「言わなくていい。さっきの私の作戦で行こう。
リヴァイがいないことに気づいても、騎馬特攻を放っておくことは出来ないはずだ。」
エルヴィン団長が立ち上がり、私の肩を押し自分の後ろに隠した。
あぁ、やっぱり、エルヴィン団長はもっといい作戦があることに気づいているのだ。
彼が守りたいのはきっと、リヴァイ兵長でー。
そんな強い絆を前に、人類の勝利を前に、そして、兵士として、私は黙っていることは出来なかった。
エルヴィン団長が失った右腕をジャケット越しに掴む。
振り返らない彼に、私は続けた。
「巨人を使って近づいていることに気づけば、今度は獣の巨人は15m級の巨人を動かします。
そうなれば、私もリヴァイ兵長も獣の巨人に簡単に近づけなくなります。
だから、どうかー。」
「言わなくていい。君はリヴァイと一緒にー。」
「私が、新兵を地獄へ導きます。
ーリヴァイ兵長として。」
朝の強い太陽の光が、ナイフに反射する。
自慢の長い髪が、リヴァイ兵長のために伸ばしていた長い髪が、生温かい風に乗せられて飛んでいく。
甘い果物の香りがした気がしたー。