第2章 瞳
こっぴどく詰められたらしい金城さんはげっそりして帰ってきた。
私のせいじゃないのに私が悪い気がしてきた。
「あの……なんかごめんなさい。」
「お前は悪くない。ゆかりはただ、俺の隣にいればそれでいい。」
キザなセリフをサラッと言ってしまえるのはアイドルだからなのかな。
「まあ、とにかく、不要不急の外出はするな。この家で全部のことができるように全部外注すること。困ったら同じフロアの住人を頼れよ。」
あの、THRIVEの。
「そういえば、先程の方たち、私を知っているようでしたが、どうしてでしょう…」
金城さんは、うっという顔をして、少し考えた後、私の頭を撫でた。
「まあ、気にすんな。俺から、あんま馴れ馴れしくすんなって言っとく。」
「はぁ…わかりました。」
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金城さんとの生活は、ただただ快適だった。
仕事をしない1日と言うのがまだ慣れないけど、勝手に家の掃除をしたり、家にあった植物のお世話をしてみたり、金城さんが読んだのか分からないけど部屋にある有名な小説を読んだり。自由気ままに過ごしている。
「お父さんとお母さん、元気かな。結城くんは、会社で上手くやっているかな。突然消えたから、絶対残業してる先輩、ごめんなさい…」
ぼんやりいままでの生活を考えた。
なんとなく見てなかった携帯を見た。
両親は金城さんの番号を知っているし、会社は両親の連絡先を把握しているので、何かあれば金城さんから連絡が来ると思ったからだ。
今思うと、なんでこんなに信用してるんだろう。
自分の心の奥で、金城さんを疑うとか、そーいう気持ちが一切ないことに驚く。
「アイドルってすごい。」
いつの間にかわたしは金城さんの手中にあるんだ。
このままあの人の言う通り結婚するのかな。
わたしは金城さんをどう思ってるんだろう。
色々考えたら疲れて、電源を入れた携帯をソファに投げて、昼寝することにした。