第2章 瞳
あの後、眠ってしまった私が目を覚ましたのは、夕方だった。
「ずっとそばに居てくれたんだ…」
椅子に座ったまま、ベッドに頭を預け眠る金城さんの髪を梳いた。
その時、ガチャっと音がして、誰かの声がした。
「ごうちーん。朔ちゃんが呼んでるよー。てか般若だよ?」
「剛士。うるさいから早く行ってやれ。」
「って、ゆかり。」
「わー!ゆかりちゃん!10年振りー!!会いたかったよー!!」
この人たちって、THRIVEの人達?
わたし、知り合いなんかじゃないのに…まるで知り合いのように話しかけられる。
「お前ら……勝手に入ってくんじゃねえ。」
心底不機嫌そうな金城さんの声。起きたんだ。
髪を梳いていた手を握られて、金城さんが身体を起こす。
「え、なにイチャついてんの?」
「てか、ごうちん、スキャンダルー!B-project初だよね。第一人者がごうちんなんて超意外ー!!」
「硬派語ってるくせにな。」
ふたりともなんだか嬉しそうに金城さんをイジっている。
手を握ったまま、金城さんが言う。
「うっせ。お前ら、話は後で聞いてやるから、出てけ。こいつ、調子悪いんだよ。」
「そーだったの?!ゆかりちゃん、大丈夫?」
「ゆかり、剛士が嫌になったら、いつでもうちにおいで。」
「あ、ありがとうございます…?」
「チッ」
ふたりともニコニコしたまま出ていった。
金城さんと二人きりになる。
「あの、お陰様で体調良くなりました。さっきはありがとうございます。」
「おう。夕飯、弁当買っといたから、適当に食ってくれ。俺はこれから事務所に行く。」
「わかりました。お気をつけて。」
微笑んでそう言うと、金城さんがこちらを凝視したあと、「ん。」と軽い返事をしてそっぽを向いた。