第1章 未来〜if〜
あの後、あとは若いものたちに任せようと、両親は馴染みの居酒屋へと出かけて行った。
結局、彼氏が出来たこと、言い出せなかった……あんなに喜んでいるし。どうしよう。
「不安そーだな。」
金城さんに話しかけられて、肩がビクッとなった。
「あーあ。警戒されちまったか。」
「……あの、わたし、彼氏いるので。金城さんと結婚、できません。」
「は?」
ギュッと目をつぶって、一気に言う。
「親にはまだ報告してなかったけど、一昨日告白されて、付き合うことになったんです。だから……」
「そんなやつ、どーでもいいだろ。俺にしろよ。」
あの、燃える赤い瞳がいつの間にか近くにあって、見つめられる。
わたし、絶対いま顔赤い。こんなの、アバズレじゃん。なんか、泣けてきた。
「なっ、泣くほど嫌かよ……」
金城さんは落ち込んでいるようだ。わたしを幸せにするといった言葉も、俺にしろって言い寄ってきた瞳も、落ち込んでいる姿も、全部真っ直ぐで嘘はないように思えた。
「とにかく、世間ではお前が俺の彼女ってことになってるのは確かだ。会社も、家も、もうバレてると思っていい。実家も、時間の問題だ。」
そんな……何も悪いことしてないのに、隠れなきゃいけないの?
「俺の家に来い。責任取って、守ってやる。」
そう言った金城さんに、不覚にもときめいた。
ああ、やっぱりアバズレ……
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実家の両親は、出張を早めてもらって赴任先に二人で行くことにしたそうだ。
「ゆかり、幸せにね。」
「金城くん、娘をよろしく頼むよ。」
「ご迷惑をお掛けしてすみません。お義父さんお義母さんもお達者で。」
お義父さんお義母さんって……
一人暮らしの家はとりあえず放置で、わたしは金城さんが住む高級マンションで暮らすことになった。
結城くんに迷惑かけられないし、金城さんのおうちセキュリティ凄そうだし、こっちの方がいいんだよね……実家の両親も大喜びしてたし。
自分に言い聞かせ、マンションへと足を踏み入れた。