第1章 未来〜if〜
会社は、問題を起こしたと見なされて、退職することになった。
結城くんには、JOINを一通送った。
「お付き合いの話、なかったことにしてください。迷惑かけてごめんなさい。」
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金城さんが案内してくれたマンションは覚えきれないほど広くて煌びやかだった。
ロビーのソファで休憩していると、金城さんがコーヒーを持って来てくれた。
「悪かったな。色々と振り回しちまって。ちゃんと、責任とるから。」
また、真剣な瞳。これって何回プロポーズされてる?って気持ちになるよ。
金城さんイケメンなんだし、ドギマギしてしまう。
「あの…いえ…」
こんな言葉しか出てこない。真っ直ぐ顔を見れないし、下を向いて、わたしコミュ障じゃん。
会社は、就職してから3年、真面目に働いていたけど、やりたかった仕事とかではない。むしろ、小さい頃の夢は、お嫁さんだった。
結城くんには、申し訳ないことしてしまったけど、今この状況でパパラッチから逃げることに巻き込むことはしたくないし、下手したら結城くんまでクビになってしまう。
「金城さんのお嫁さんになるかは、わかりませんが…当分、よろしくお願いします。」
そう言うと、赤い瞳を細めて、ニッと笑った。
い、イケメン…
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「アンタ!!スキャンダルだけは辞めてって言ったでしょ!!」
先程から金城さんが叱られている。けど、ツーンとした顔だ。
この方は夜叉丸さんというらしく、彼らのマネージャー的な仕事をなさっているそうだ。
「でも、あなた、ゆかりちゃんなのね。あの時は急に消えたって聞いて驚いたわよ…10年前と変わらないのはどうしてかしら?」
「夜叉丸さん、その話は後で。」
10年前……?消えた……わたしが?
その時急に、胸に刺すような痛みが襲った。
「うっ」
「おい!」
倒れ込むわたしを抱き留めて、金城さんが焦っている。
「やだ、大丈夫!?救急車!?」
「夜叉丸さん、後で怒られるから。いまはこいつを部屋に運ぶ。」
「わ、わかったわ……」
金城さんの腕の中で、意識が遠くなっていった。