第1章 未来〜if〜
今日は実家から呼び出しが入っているので、残業せず定時で上がり、真っ直ぐ実家へ向かった。
「ただいまー」
「おかえり」
「?!?!?!」
出迎えたのはトップアイドルB-projectの金城剛士さんだった。
「な……な……」
「あー!ゆかり!おかえり!あんたこれ見て見て!!」
わなわな震えていると、母親がテレビをつけた。
『トップアイドルが街中で愛の抱擁!!』
昨日の写真がテレビで大特集されていた。
「ママ感動しちゃった!これ傍から見たら分かりづらいけど私にはわかる!私の子だって!!」
なぜか胸を張る母親。
「なんでそんなに嬉しそうなの……?」
「だって、ママB-projectの大ファンなのよ!!ママが推してるのは、北門倫毘沙くんなんだけど〜。キャッ!」
自分の母親が女子高生みたいだ……恥ずかしい……
「あー、北門に次会った時、サイン貰ってきますよ。」
「本当?!金城くん、さすがだわ〜!」
ホクホクしている母親を他所に、わたしは冷や汗をダラダラかいていた。これ、全国ネットだよ。結城くんも見てるよね。後ろ姿だから、別人だって言い張ればなんとかなるかな。いや、ならないかな。もしかして、今日の会社の人の視線って、これのことなのかな……
「それでね、ゆかり。金城くん、あんたをお嫁に貰ってくれるって。」
ハンカチで目元を抑えながら、母親が話し出す。
「あんた、何年も彼氏いなかったし、こんな素敵な人が相手なんて、本当にママ嬉しいの…」
「お、お母さん!!待って!!」
「娘さんのことは、俺に任せてください。絶対幸せにします。」
「ああっ!!」
「お母さん!!鼻血!!!」
何だこの展開?!金城さん、強引すぎない?!
そうだ、父親。父親が帰ってきたらきっと反対してくれる。
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「ゆかり……立派な女性になったな。式はいつ上げるんだ?来月出張があるんだが。」
「お父さーーん!!」