第3章 印
盗まれた印はなにに使われるんだろう。
どうして記憶を失っていたんだろう。
分からないことだらけだけど、日々は過ぎる。
現代に帰ってきてから、半年以上がたって、いまは秋も終わりかけだ。
剛士くんたちは、年末にかけてさらに多忙にしている。
いまは狙われない身だから、普通に外に出て買い物したり、図書館で情報収集したりしている。
「来月の24日、オフだから。空けとけよ。」
クリスマス当日は、収録があるらしいけど、イヴはお休み取ってくれたらしくて、一緒に過ごそうって予約してくれた。
「なんか、恋人っぽく過ごすのって初めて。」
ウキウキした気持ちでスーパーからの帰路に就いていたら、
「かーのじょ。」
と声をかけられて、嗅いだことある匂いがふわりとした。
「健十くん。」
「バレちゃった。記憶戻ったんだって?おめでとう。体の調子良くないみたいだけど。ゆかり限定で、特別リラクゼーションしてあげようか?」
「いえ、大丈夫です。」
肩を抱かれて荷物をさりげなく持ってくれた。
少し照れて健十くんの顔を見上げる。
すると健十くんはニヤっと悪い顔で笑った。
「俺と熱いキスしたことも、思い出してくれたの?」
「!!そんなこと知りません。」
「ん〜?本当に覚えてないのかな。」
「……」
キッ!!と、屈辱の目で睨むと、笑われた。
「からかうとすぐムキになるとこ、剛士にそっくりだな。」
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