第12章 瓦、彼方へ

再び階段を登ったところにある三重塔は美しく主に彼を魅了して、隣に植えられたモチの木は樹齢約400年の木だと言う事で長い歴史に思いを馳せてみたりした


宝厳寺では唐門と呼ばれる国宝を間近に見る事が出来たが彼はやはり柱中に張られたお札ばかり見ていて

「どうして日本人はこんなに複雑な建造物を考えついたんだろう。」なんて真剣な表情で不思議そうに呟いている所をバシバシ激写しておいた


もうひとつ有名な国宝、船廊下は船の骨組みを利用して造られた一風変わった美しい建築物で

此方は彼のお目がねに叶ったらしく二人並んで静かに眺めた



しかし本当に彼の言う通り昔の人は木だけでこんなに美しく繊細な建造物を造ってしまうのだから凄い

今より技術だって発達していない中で誰が最初に思い付いたのだろう…………



その後隅々まで全てを見て回った私達が最後にやって来たのは都久夫須麻神社本殿の瓦投げだった


2枚で300円



岩肌に立つ鳥居に向かい願い事を書いた瓦を投げて鳥居を潜れば願いが叶うというやつだ


別に1枚ずつで良いと言う私の提案により1組を購入してもらい、私達は各々マジックで願いを書き出した



【ずっとイルミさんと幸せに過ごせますように】



お願い事を書く、なんて何だか七夕みたいだなと………ふと過去を思い返してはっとした


そうか………以前なら彼の名前を書く事なんて許されなかったけれど今なら堂々と書けるんだ……


本当に願って止まない私の願いを彼に隠す事も誰に誤魔化す事もしなくて良いんだ………



途端に笑みが止まらなかった


私は本当に幸せだと心底実感して意味も無く彼にありがとうと言いたくなった