ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第44章 あなたの為なら宇宙へも?
そうか…………彼は感覚が狂いまくった大富豪だった…………
「………買収ってどうやって………」
「沙夜子がどのような形で保有したいかにもよるけど……名付けた学者を買収して名付けの権利を沙夜子の物にしたり、星の土地を買ったり、星の欠片を望むなら宇宙開発局を買い取って取りに行かせればいいし。」
最早意味がわからないスケールの話を淡々と言ってのける彼がぐっと身を屈め
「沙夜子が望むなら俺が何だって与えるよ。」
不意に耳元に落とされた囁やきにゾクリと背筋が震えた
その声色があまりにも妖しく闇を孕んでいたからだ
今の今まで現実離れした星の話をしていて…………有り得ない話が妙に身近に迫り困惑した……
だからこそ……………それこそ現実味なく自他に関わらず命すら差し出すと言われた気がしたのだ
艶々の髪をそっと掬って耳に掛ければ覗く彼の表情
そこからはやはりその声色と違わず特徴的な瞳に危うい欲望を仄めかしていた
"与える"……意識的にか無意識的にか彼はそう言った
私が望むものは全て彼が与えるというのは………逆に言えば彼から与えられるもの以外は受け取らせないという事だ
彼の愛情表現の中には常に見え隠れする独占欲と支配欲が入り混じる
知っている、彼は元来そういう人だし………めちゃくちゃに病んでいる
………………ただ、私としてはどんなイルミ様も素敵!好き!と思っているのに……時折こうして病ませてしまう程私の愛は届いていないのかなぁ……とも思って少し悔しい
未だ仄暗い眼差しで私を見詰める彼だが、そんな今だって愛しいのだ
「ねぇ、イルミさん大好きです!今日なんてこの星空よりイルミさんが綺麗やし!私この人の奥さんなんやって思ったら宇宙まで飛べそうですよ!」
出来る限り私の想いが伝わるようにぎゅーっと彼に抱き着いた
ドキドキと高鳴る胸もそのままに全てが伝わるように全身全霊で
最早締付ける勢いだが、彼にしてみれば普段よりちょっと強いハグくらいのものだろう
…………………これで少しは私の想いが伝わっていればなんて
…………………彼は中々一筋縄ではいかないのである