ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第12章 瓦、彼方へ
私は暫く呆けた後に肩を上下させながら再び階段に足を掛けた
身体はキツイがいつまでもこんな所で立っていても何も始まらない
進まねば何も変わらないのだ………!なんて先程迄の罰当たりな思考を無かった事にしながらも
「……イルミさん………腕筋格好いい………」
「あっそ。」
彼の強靭な腕に引き上げられながら足取り重くゴールと思われる鳥居を潜り少し笑った
………………まだゴールじゃなかった
鳥居を潜った所には瑞祥水と書かれた木製看板と小さな石像
そして手水舎があるだけだった
いや、有難い物に違いないが………
「………ちょっと休憩しませんか……っ」
息も絶え絶えに伝えた私に彼は全く淡白な視線を向けた
「別にいいけど。」
暫く呼吸を繰り返しとりあえず礼儀として手水舎で両手を洗う
そんな私をチラリチラリと見ながらも柄杓を真似る様に扱う彼の姿は非常にキュートで胸が和んだ時
「沙夜子見てごらん、湖がよく見えるよ。」
彼に呼ばれて並び立って疲れがぶっ飛ぶ様な爽やかな気持ちに満たされた
「…………凄い………綺麗………!」
眼下に望む琵琶湖は快晴に何処までも輝き、此所が離島であるのだと教えて
此処まで登って来たからこそ見られた絶景は針葉樹の緑さえも全てが美しいものだと気付かせたのだ
気持ちが軽くなれば足取りも軽くなる
「よし!頑張ります!行きましょう!」
汗をハンカチで拭いながらも笑顔で見上げた私に彼は黙ったまま大きな手を差し伸べた