ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第11章 気まま旅の始まり
「沙夜子、起きなよ……沙夜子」
「………んぅ………」
重たい瞼を開いたと同時、この世のものとは思えない美形が間近に見えて心臓がバクンと変な音を立てた
そしてそんな絶世の美形が私の肩に触れている事にかなり今更ながら驚いてしまって
途端に目を見開いた私に彼は気だるげに黒く長い前髪をかき上げて緩やかに言を紡いだ
「おはよう、ランチの場所に到着したよ。」
「おは、おはようございます……」
挙動不審になりながらペコペコ頭を下げる私を横目に淡々と車を降りた彼の後を追えば見えた近江牛の文字
普段の私なら即座に反応を示す筈なのだが私はどうにもときめいて仕方がなかったのだ
座敷に通されて彼と向かい合えばドキドキと心音は更に早まった
「何にする?」
「は………んんー………」
「……………。」
彼は出会ったその時からずっと美形だった
だけど毎日見ていると本当に本物の美形なのだと知らしめられてしまって
弓なりな眉やすっきりと高い鼻筋、そして印象的な双眼に薄い唇
陶器の様な透き通った肌を際立てる艶やかな黒い髪
私は今この人を独り占めしているのだ…………
メニューを此方に見易い様に然り気無く傾けて少し身を乗り出した彼が近くてカッと頬が熱を帯びる
「俺、ステーキにしようかな……沙夜子は?」
「わ、私も同じ物を………」
何を今更なんて言わないで欲しい
私は寝起きの無防備な状態でクリティカルヒットのカウンターパンチを食らったのだ
淡々と注文する彼をうっとりと眺めながら片想いの頃より膨大に膨らんだ想いが身体を巡る
無機質で感情の希薄な彼が私と何気無く会話を交わしている事すら時々不思議になるのに
彼を独り占めにして今から一緒に食事だなんて…………………と言うか…………新婚旅行中だなんて…………ッ!!!!!!!
幸せで爆発してしまうんじゃないか!?!?!?
運ばれて来た水のグラスを傾けた彼の伏し目がちな瞳と目があって私は机に倒れ込んだのだった
…………夫婦になってもこの調子だなんて私はこの先心臓発作で死んでしまうかもしれない………