ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第44章 あなたの為なら宇宙へも?
ファンシーなピンを取り払いすっかり漆黒一色に戻った長い髪が彼がソファーから立ち上がった事で目の前に揺れる
久しぶりに彼も揃って夕飯を!と浮かんだ矢先だったので沈んでしまった私の声に黒より黒い双眼がこちらを見下ろした
「この街は治安が悪い、間違っても外出はしない事。何か変わった事があれば連絡を怠らない事。全てルームサービスに頼むんだよ、いいね沙夜子?」
この部屋にやって来るルームサービスには全て彼が雇ったボディーガードが着いて来る
彼の長い指が何事も無いようにそっと私の顎を掬い上げて合わさる視線
私が小さく返事を返すと彼は唇だけで薄く笑って「それじゃ、行ってくるよ。」と振り返りもせず部屋を後にした
…………何度思い出しても好き過ぎる
弓なりの眉、すっと細められ長い睫毛が影を作る大きな双眼、スラリと高い鼻筋に薄く色付いた唇……
まるで無機物みたいに無色透明な雰囲気が口元や瞳の小さな仕草で気怠く色を帯びる瞬間がもう………… 堪らない…………!!!!
時刻はもうすぐ22時に差し迫る
………どれだけ惚れ惚れとしていたのか………どれもこれもチカチカと眩い星空を見ていると掴んで取れそうな気がする
別に本気じゃないけれど本当に何気なく手を伸ばしたその時
「何してるの?」
遠くバルコニーの入口から投げ掛けられた声に全身で跳ね上がってしまった
「っ………!!!!びっくりしたぁ〜……おかえりなさい……」
バクバクと騒ぐ心臓をそのままに振り返って私の唇はそのまま動かなかった
私の言葉に「ただいま」と間の抜けた普段の声色で返す彼だが
今夜が月のない夜だからか、それとも暗殺を終えた後だからなのか
まるで夜を引き連れるように闇を纏い悠々こちらへ向かって歩を進める彼の姿は背筋が冷たくなる程恐ろしく
そして夜に広がる星空よりも美しく見えた