ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第44章 あなたの為なら宇宙へも?
そして一方の息子陽葵は、相変わらず物静かだが確固たるマイワールドやこだわりを持っている子に成長した
今も片手に持った赤いミニカーとは入浴中も離れない大のお気に入り
それを彼の長い脚に黙々と走らせている
彼によく似た黒々とした大きな瞳は真剣そのもので彼の脚……否、赤いミニカーに熱視線を送る
脛を上り膝を通過、太腿まで到達したミニカーはそこを行ったり来たりする
チラリと彼を見上げた息子、それに応えるように落とされた眼差しと吊り上げられた片眉
息子は小さく笑うと再びミニカーを走らせて、彼は再び新聞の文字と向き合ったまま脚を組み変えなくなった
………子供達だからこそ成し得る事だ
そんな奴いないが、彼の脚にミニカーを走らせたりカラフルピンを髪に付ける他人がいたならきっと手が触れると同時にこの世から消されているだろう……いや、本当にそんな奴いないな………そんな事を考えていると
バサリと折り畳まれた新聞紙
傍らに転がっていたスマホを持ち上げた仕草からそろそろ彼が仕事へ向かうのだと理解する
「ほら、お父さんお仕事やから頑張ってねして!」
私が言えば娘は彼の腕にぎゅーっと抱き着き息子は彼の足の甲を撫でた
「「がんばってね、いってらっしゃい」」
「いってきます、沙夜子の言う事をよく聞くんだよ。」
なんて言いながらスマホで何やら確認作業をしている彼の髪から私が然りげ無くピンを回収してゆく
「どれくらいで帰ってきます……?」
「今夜は帰るよ。」
「やったぁ!夜ご飯どうしましょう?」
「夕飯には間に合わないから先にルームサービスで済ませておいて。」
「……そっかぁ……わかりました」