ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第44章 あなたの為なら宇宙へも?
朝の光の中で立ち上るコーヒーの香り、彼はいつものマグカップを片手に視線だけ忙しなく新聞を読んでいた
気怠く組まれた長い脚、見ているのかいないのか流されたままのニュース
彼はやはり何をしていても誰も寄せ付けない耽美な雰囲気を醸していた
…………しかし子供達はそんな事一切気にしない
娘は最近お気に入りの玩具のジュエリーボックスを片手にソファーへ登ると彼の隣を陣取った
最近の娘は美容師さんごっこに熱中しているのだ
「おきゃくさんきょうはどうしますか〜?」
なんて言いながら彼の長くサラサラの髪にクシを通して「こちらすごくおにあいですよ?!」とピンク色のリボンを充てがった
「おきゃくさんこっちもにあいますね〜!」
娘からしてみると似合っているとかいないとかそんな事はどうでもよくて、とにかくデコデコと飾り付けるのが楽しいらしい
パサリと新聞のページを捲る彼は娘のごっこ遊びに付き合うでもなく返事こそしないけれど、まるでお人形さんのようにされるがままになっているのだ
「えっ!おきゃくさんハートもにあいますね〜!」
「……………。」
我関せずの態度のまま真剣に新聞を読み込む彼の髪にはびっくりする程不釣り合いなリボンの他にハート型や星型で蛍光色のピンがあっという間に花を咲かせた
彼の凛とした横顔にあまりにも似合わない見るからに女児向けのアクセサリー…………
私は気付かれぬように頬の内側を噛んだ
この世界では写真1枚に懸賞金が付き、伝説の殺し屋と呼ばれる彼の姿がこんなにキュートだなんて……………ッ!!!!!
…………それに流石私達の娘愛菜ちゃんだ……
毎朝毎朝華麗にスルーを決められていても微塵の意も介さない
そのメンタリティが私譲りなのか、はたまた娘と互いに意も介さずにいる彼譲りなのか最近気になる所だ………
たまに彼が視線を向ければここぞとばかりにゴリ押すのだから強い