ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第43章 知人に会う話
緩やかに歩調を落としながらキョロキョロしていると
「そうそう!そこの激イケご夫婦〜!!!」
なんて叫んでいたのは、駅前広場の遠くに見えるキッチンカーの男性だった
…………激イケって……………とその台詞回しに引っ掛かりながらも目を凝らせば、その男性は面影を多分に残した懐かしい人物
「………………藤木!?!?」
途端に綻んだ胸
こうも懐かしい場所で懐かしい人物に再会するとは………!!
私がまだ彼に片思いをしていた日々に勤めていたコールセンターでの元同僚であり、彼を失った世界に泣いていた私のやけ酒の友
そんな藤木に最後に会ったのは私達の結婚式を終えて少し経った頃、彼も交えて3人で飲みに行った以来だった
思わず叫んだ私の隣で彼が怪訝そうに眉を潜めている
しかし私はそんな事はお構いなしに彼の手を引いてキッチンカーへ走り出していた
「さーやお前元気してたか!イルさんもお久しぶりっす!!」
互いに大人になったけれど、あの頃と変わらない屈託の無い言葉にニカッとした笑顔
藤木の人懐こい雰囲気に自然と私まで笑顔になる
「藤木こそ元気にしてた!?」
「おう、めちゃくちゃ元気にしてた!」
そのままの笑顔で彼を見上げれば諦めたように小さく溜め息を付いた後に普段の無表情に戻った
多分彼の事だから私より先に藤木の存在に気付いていたのだろうけど、何より目的達成を優先する彼からしてみれば"ランチへ行く"という目的を達成出来ずモヤモヤしてしまうのだろう
それでも私にされるがまま付き合ってくれる程度には藤木は警戒対象では無いらしい
…………考えてみれば3人で飲み会なんて事にも付き合ってくれていたし、藤木が主催したハロウィンパーティーにも2人して参戦したのだ
彼からしてみれば藤木は穏やかなこの世界で数少ない普通に接する人物なのかもしれない
「それより腹減ってない!?久々の再会を記念して何か食っててや〜奢るからさ!」
なんて私達を交互に見詰めた藤木は陽気なオレンジ色のエプロン姿で背後のキッチンカーをビシッと指差した
懐かしさと再会の高揚ですっかり気にしていなかったが、どうやら藤木は現在キッチンカーで働いているようだ