ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第43章 知人に会う話
11月のある日
11時24分
実家に子供達を預けてアパートからの慣れた道程を彼と行く
茹だるような夏から季節は移り変わり、束の間だった秋に終わりが見え始めた気温
温暖差の少ない異世界と比べれば随分と変動があるなぁ……なんて、彼と出会わなければ知りもしなかった事を考える
本当に自然な流れで緩く繋がれた大きな手の温もりにドキドキしながらも、久しく向かう道が懐かしくて堪らなかった
私達は揃いの慣れた足取りで駅前へとやって来たのだ
初めて彼と出会った日々の中で私は居酒屋でアルバイトを始めた
休日の雑踏に賑やかな駅ビル前は、面影をそのままに広がっていた
あの日々の中でいつしか私達の待ち合わせ場所となった街灯
アルバイトを済ませてビルを抜ければ、すっかり夜が更けた静かな駅前、決まった街灯の下で彼はいつも私を待っていた
何の変哲も無い駅前の街灯が思い出に彩られて私の胸を締め付ける
「懐かしいですね〜……」
不意に漏れた言葉に彼は同じ方を見る
「いつも迎えに来てくれましたよね」
すっかり寝静まった街を彼と並んでアパートへ帰る……そんな日々が永遠に続けば良いのにと願いながら沢山話した
アパートでいるのとも違う2人の時間が私は大好きで、凄く特別に思っていた
溢れ出しそうな気持ちに胸が潰れてしまう程大好きな人が、ただアパートへ帰るために共に歩いてくれるあの時間が
随分と下らない話を沢山したし、些細な事しか話していなかったけれど
私はあの時間を毎晩毎晩噛み締めて歩いていた
そんな記憶が一瞬にして蘇る駅前で今隣にいる彼は私と同じ何の変哲も無い街灯を見詰めている
私の言葉に返事は無かったけれど、横顔から僅かに見て取れる表情から彼も懐かしいのかな……と感じた
「ねぇ、イルミさん」
呼び掛ければ途端に注がれる眼差し
……………そう言えば彼はいつから私に想いを寄せてくれていたのだろう………なんてふと思ったのだ
暑い日も寒い日も毎晩毎晩街灯の下で私を待ってくれていた彼はお別れのその時ですら好きだとは言ってくれなかった
だけど今振り返ると彼の行動には想いがあったんだと気付くのだ