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ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編

第41章 彼が選ぶもの




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20時59分



お料理はどれも美味しくて私は何度も幸福の溜め息を漏らした

そしてずっと御無沙汰だったお酒は、砂漠に1滴の水を垂らす様に五臓六腑に染み渡り

シャンパンとワインを3杯飲んだだけでほろ酔い気分である

私は嬉々と料理を褒め彼にラブコールを送っていたのだが、そんなコース料理の途中で不意に停まった馬車


ウエイターさんに告げられた「時計台に到着致しました」の声を聞くなり彼は私にコートを羽織らせて馬車の外へ連れ出した


冬のキンと冷えた空気に両肩を抱き、促されるまま見上げれば石造りの時計台は思いの外立派なものだった




「この時計台の歴史は古く、約500年前からあるんだよ。この街のシンボルだ。」


「500年……でも確かにこの街にピッタリの雰囲気ですね!」



長い針が動いて0を指した時澄んだ鐘の音が響いたと同時、時計がキュルキュル動いて中から石工師を模した人形が現れた

所謂カラクリ時計だったのだ


ぎこちなくも石を切り出すカラクリ人形


楽しげな音楽の代わりに重厚な鐘の音が響く様子は素朴ながら長い歴史を感じさせる素敵なものだった


チラリと彼を見上げれば、その視線に気付いて落とされた眼差しに頬が緩む




「素敵ですね」



「沙夜子が好きそうだと思ったんだ。」



「もう全部最高ですよ!イルミさん、ありがとうございます」


「どういたしまして。」




私がこの街を気に入ったから街歩きに連れ出した

私が以前馬車の旅を楽しんでいたから馬車レストランを選んでくれた

私が好きそうだから………彼のその言葉から深い愛情を感じてどうしようもなく溢れる愛しさや喜びに何だか泣きそうになった



鐘の音を聞き届けた私達は再び馬車で食事を続けた


コースも終盤に差し掛かった頃、彼から贈られたのは小さなアイビーの鉢植えと上品なブラウンの財布だった




「もう何から何まで……イルミさんってエスパーなんですか!?もうめっちゃ嬉しい……ありがとうございます……うぅ……っ」


「泣かないでよ。」





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