ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第6章 セミが泣く
ちゃぶ台の中心にて僅かな機械音を鳴らしながら水が流れ出す
私達は並び座っているのだが彼は一体今から何が起きるのかと流れる水をじっと見詰めている
作り物の様に美しい横顔から覗くクリクリの瞳
私はこれが見たかったのだ
ジャポン出身でも無ければきっと知らないに違いないと思っていた
「さ、始めましょう!」
「何を。」
私が菜箸で一束そうめんを流せばクルクルと回り出し、それを掬って食べるのだと言えば彼は何故そんな不要な事をと不思議そうに首を傾げた
「鹿児島のお店が始めたのが起源らしいです!ようは夏の暑い日に涼を求める粋な日本の文化が現代的に進化したんですよー!」
「ふーん。」
「別に意味なくても楽しいかなって」
様子を伺いながら笑えば彼は柔らかな声色で「まぁ、そうだね。」と僅かに表情を緩めた
お酒を注いだグラスをカチンとぶつけて
「いただきます!」
「いただきます。」
私達の何でもないパーティーは始まった
二人して流れるそうめんを掬ってネギに生姜、ゴマと刻みのりと細切り卵焼きにきゅうり、薬味をたっぷり乗せて啜ればつゆの風味が鼻から抜けて何だか贅沢な気分になった
「んー!美味しい!」
「美味しいね。」
彼は嫌がる素振りも無くしっかり麺を流してから、とてもこの部屋には似付かない優雅な所作でそうめんを食し
私の内容の無いお喋りに時々相槌を打つ
普通に食べるそうめんも美味しいけれど普段より少し特別な雰囲気に気が付けば追加を茹でる程に随分と食べた