ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第41章 彼が選ぶもの
12月のある日
19時27分
私達は子供達をランさんにお任せし、街に繰り出していた
拠点は都会的なヨークシンから中世ヨーロッパ的な石畳の美しい街に移り、人口も多く栄えてはいるけれど雰囲気は随分違う
ゆらゆらと揺れるガス灯が照らす街並みは異国情緒満載で、特別飾り立てられている訳でもないのに何だかロマンチックだ
そんな景色の中私は彼の背中を追っていた
入り組んだ路地は狭く、それにしては通行人が多いので縦に並んで歩いているのだが
そんな小さな路地の中にも所狭しとショーウインドウや露店が並んでいて、美味しそうなクッキー屋さんから美しいお皿まで物珍しさに目移りして視線は忙しない
不意に目に付いた淡いピンクのふわふわマフィンに気を取られて立ち止まった私だが、流れる人並みの中立ち止まった事で背後から来た人とぶつかりそうになってしまった
しかし私がよろけ無かったのは、そこに彼がサラリと割って入ったからだ
背後から私の両肩をやんわり掴み人を避けるようにショーウインドウへ向き合った私達
彼の振る舞いが本当に紳士的で、そんな不意の出来事にキュンキュンしていると降ってきた声
「何か気になった?」
「あのマフィン……めっちゃフワフワで美味しそうやなって……」
「食べる?」
「……!いいんですか、食べます!!」
赤レンガが可愛い小さなお菓子屋さんの扉を開けば甘いバターの香りに包まれた
それだけで幸せな空間に胸踊りながら暖かな室内に所狭しと並んだ焼き菓子の中から迷わずマフィンを選び満面の笑みをそのままに彼を見上げる
「イルミさんは何にします?」
「俺はいいや。」
「そうなんですか?」
「沙夜子はそれだけでいいの?」
「はい!夜ご飯も楽しみやし!」
「そう。」
私達はピンクのふわふわマフィンをひとつ購入してお店を後にした
外に出れば日が落ちてすっかり冷え込んだ外気に白い息が浮かぶ