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ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編

第40章 ファミリーの庭園








全く避ける気も無く叩けてしまう胸板も、ずっと握られたままの右手も、悪戯に歪んだ唇も



「ほんまに痛いんですよ……何で噛んだんですか……」


「さぁね、沙夜子はどうしてだと思う?」


「えっ!……し、知りませんよ!」



そして何より彼は私から答えを聞き出す気は無いらしく、暫く他愛もないじゃれ付きを楽むと平然と普段の雰囲気を纏った


…………彼のスキンシップはいつも何がきっかけか分からないし、その上過激だ

まるで波のように激しく押し寄せてはいつの間にやら静かに引いている………




「……さて、それより沙夜子最近生魚食べてないでしょ。」




単調、淡白、無表情……いつの時でも彼の変わり身の早さには驚かされる

そして突然の話題変更についていけないのもいつもの事だ



「………はい???」



先程までの甘い空気は消え、名残りと言えば未だ右手が握られているくらいで、全く思考が追い付かぬまま緩く腕を引かれ彼と共に何処へやら歩き出す


到着したのは巨大生け簀と化したプールだった




「こっちでは生魚を食べる文化が無いからそろそろ恋しい頃かと思って用意した。」




そう言った彼は、太陽に照らされてキラキラと光る水面に眩しそうに睫毛を伏せた


涼し気な横顔からは何を考えているのかさっぱり分からない

………だけどそんな彼が私の事を考えてくれていた




活き活き泳ぐ魚はよく見るとジャポンで連れて行ってくれたお寿司屋さんで見知ったものばかりで


その優しさに手をぎゅっと握れば大きな手が応えるようにぎゅっと握り返してくれた





……………その後彼の手によりプロさながらに捌かれた魚介類の数々は豪華絢爛に贅沢を極め…………



「沢山食べるといい。」



「わ、ワーイ………ヴォェッ………」



永遠に思える生魚の大食いを経験した私は暫く魚の顔を見るのも嫌になったのだった






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