ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第37章 彼がドレスを脱ぐ時は
「あらいいじゃない!」
隣で同じように立ち止まってくれていたランさんのおめがねにも叶った素敵なドレス
…………間近で見て益々惹かれたそのドレスは何故か私の脳裏に彼の姿を浮かばせた
ずっと古くから大切にされてきたドレスは未だ色褪せる事無く美しく、気高さすら感じる程に全体のデザインや雰囲気から気品を漂わせていたから………
「でも沙夜子ちゃんには随分サイズが大き過ぎるんじゃないかしら?」
そしてそのドレスが私には大きくて到底着こなせないサイズだったからかもしれない
私より背の高い174cmのランさんもかなりのオーバーサイズだと言ったドレスはきっと彼なら完璧に着こなせる筈なのだ……
彼は娘が生まれてから私が自由に使える現金を置いていくようになった
それは直ぐ側にランさんがいて気晴らしにと外出の機会が増えた事、娘の育児に消耗品が増えた事、そして「沙夜子の欲しい物があったら買えば良いよ」との彼の気遣いから頂いたものだ
相変わらず無断外出は禁止だし、それこそランさんの同行無くしては買い物にも出られない束縛ぶりではあるものの……
私はそれを素直に受け取り娘の物を買ったり、ランさんが訪ねて来てくれた際のランチにちょっと贅沢をしていたけれど
気が付けば自分の欲しい物を購入した事は無かった
そして初めて欲しいと思ったのが彼に差し出したドレスだったのだ…………
普段ならばキッパリ嫌だと跳ね除けられるに決まっている
彼は可愛いだとか美人だとかそういった言葉をかけると度々不満気な顔をするし、以前のハロウィンの際だってタダではコスプレしてくれなかった
それこそお化粧をさせてもらった事もあったけれど、大興奮の私を余所に彼はそそくさと化粧を落としていた
だけど催眠術が効いている今の彼ならば………
真っ直ぐに私を映していた瞳がドレスに視線を落とすと、彼はすんなりと受け取りコクリと頷いた
「〜〜〜っ!!」
嬉しさのあまりに先程から頬が緩んで仕方がない
最早興奮のし過ぎで卒倒しそうな勢いである