ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第5章 友達
8月のある日
私は彼と待ち合わせをしていた
此方の世界に帰ってからは日常の殆どを一緒に過ごしているけれど常に行動を共にしている訳では無く
たまには私は実家へ帰り彼が単独行動をしている事も珍しく無いのだ
彼の世界にいた頃より随分と寛容な気がするがそもそも命を狙われる危険が無い平和な世界なので彼の警戒も薄れているのだろう
現に部屋から出るなという激しい束縛や今の行動を逐一報告しろ、なんて猟奇的な独占欲を強く見せる事は随分と減っていた
桜並木が続く公園はいつか彼と夜桜を楽しんだ思い出がある
今夜は外食でも、なんてデートに誘われて愛しい彼と待ち合わせる事が出来るだけでワクワクと弾む胸
指定された時間より随分早く到着してしまったけれどベンチで彼に想いを馳せるのも楽しい気分だ
ジワジワと鳴くセミの声を聞きながらぼんやり見上げた空に少し茜色が交ざる
遠くに聞こえる楽し気な子供の声や風に揺れる青々とした木々のざわめきに胸は心地好く高鳴って
普段履かないミュールや少し色付いた唇に気付いてくれるだろうか
なんて穏やかな時間が色を変えたのは聞き馴染んだ声が突然耳に届いたからだった
「さーや……?さーややんな?!」
顔を上げた私の視界に懐かしい顔が笑う
「……おぉ!……藤木やん!」
「……まじか……!久しぶり!」
髪色こそ違えど全く変わっていない雰囲気を纏った男友達は目を見開いたまま驚きに笑っている様だった