ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第34章 スコールの夜
10月19日
深い夢から意識がフワフワと浮上して重たい瞼を持ち上げるとテント内は薄っすら明るくなっていた
愛しい娘の夢を見ていたからか何とも現実味無いままに上体を起こして、暫くぼんやりしている内に昨夜の出来事を思い出す
………………そうだ真夜中にスコールに降られたのだ…………
途端に心臓が跳ねて寝起きとは程遠く目が冴えた
と言うのも、昨夜私達が眠りについてどれくらいが経ったのか真夜中に激しいスコールが拠点を襲ったのだ
あまりに激しい雨脚はテントにけたたましい音を響かせて、バタバタと叩き付ける雨粒の大きさを容易に想像させた
深く眠っていた筈の私がその騒音に飛び起きるくらいのスコールだ、彼は私より先に目を覚ましていた
普段感じる事の無い激しい雨、自然の猛威から身を守るには心許ないテント、まだまだ明けそうにない夜の全てが不安要素になって私はそっと彼を見詰めた
暗闇に慣れた目に彼の何とも気だるげな表情が映る
互いに無言のまま、安心感を求めて身を寄せた私に彼はそっと目を合わせた
「スコールに合うのは想定内の事だ、心配する事は無いよ。」
「………はい」
思慮深い彼の事、きっと川が増水する事や地盤等も加味してテントの場所を決めて設営しているんだろう
普段と変わりなく間の抜けた声色で紡がれた言葉は私を一瞬で安心させて、私は温かい安堵に再び瞼を閉じた…………のだが
「…………えっ待って、ニック!!!!」
私は途端に飛び起きていた、心音が嫌に早くバクバクと耳にうるさい
私達は就寝前、テントに入りたがるニックを入れずにそのまま眠ったのだ………つまりニックは今スコールの中外にいる!!!!!
「うるさ」なんて彼の言葉を置き去りに私はただ焦っていた
「ニック大丈夫でしょうか!?このスコールですよ!?!?」
このジャングル内の村に住んでいると話していたしスコールには慣れているかもしれないが、流石に野晒しで雨に打たれて平気だとは思えない…………
私は慌ててテントの出入口を開こうとしたのだが彼の大きく骨張った手にガッシリ手首を掴まれ容易く引き戻されて、途端に彼に組み敷かれ私の頬を黒髪のカーテンが擽った