ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第32章 私のヒーロー
昨夜はひとつのテントの中彼にぎゅっと抱き締められて眠った
私を容易く包み込む彼の頼もしい身体に胸がきゅんとして、それでいて落ち着く香りに私は頬を寄せた
そんな私の額にちゅっと触れた形の良い唇に全身がみるみる体温を上げてそれを誤魔化す様に身動げば、長い睫毛が影を作る双眼が私の心臓まで射抜いた
見惚れる程に黒の似合うその瞳から目を離せずに見つめ合っていると彼はふと頰を緩めた
彼の些細な表情の変化や彼の一挙手一投足全てが私を魅了する
「早く寝ないと明日も早いよ。」
「……はい」
「おやすみ。」
小さく掠れて耳元に届けられた声に私は世界中で一番幸せだと思った
翌朝5時38分
何か大きな物音が聞こえた気がして目を覚ました
……………のだが、テント越しに聞こえるのは昨日と変わらない川の流れる水音だけだった
既にぼんやり明るいテント内には眠っている彼の姿もあって、野生動物の襲撃か!?!?と焦った私の心臓はすぐに落ち着きを取り戻した
彼の立てる静かな寝息に目を遣る
どうして彼は眠っているだけなのにこんなにも美しいのだろう………
普段の彼は姿勢からして綺麗で肩で風を切る歩き姿は誰の目も惹いてしまう
立っているだけで何故か圧を感じる程の存在感を放っているのに人を寄せ付けない特有の雰囲気も全て何処かに品を感じさせるのだ
そんな彼が悠然と身体を横たえている様子はまるで強者の休息を思わせた
…………いつもならそのあどけなさのギャップに頬がユルユルに緩んでいる私だが、何だか違って見える理由はきっと彼が警戒体勢だからなのだろう
例えるなら………黒豹のおやすみ中といった所だろうか
なんて、ひとり唸っていたその時だった
ガバリと上体を起こした彼が目にも止まらぬ早さでテント外へ飛び出して行ったのである
突然の出来事とスピード感について行けずただ息を詰まらせる
「……………っ?」
と同時に側の川からザバァーンッと一際大きな水音が響いた
「えっ………ぇっ!?!?」
突然開け放たれたテントに朝日が射し込み、その眩しさに手で影を作りながらもはためくテントの扉から漸く見えた光景に私は声にならない悲鳴を上げた
「〜……………ッ!!!!」