ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第31章 馬鹿は黙って漕ぐ
そこから彼が口を割るまで早かった、単調に紡がれる言葉から知り得た情報……
やはり此処は私の世界で言うアマゾン川的な川であり、危険生物の宝庫だった
「川辺での主な警戒対象としてノコギリワニがいる、奴等は主に水を飲みに来た大型哺乳類を捕食している。過去に村を襲って20人食べたなんて事例もあるし、人間も捕食対象だと考えていいだろう。」
「怖過ぎじゃないですかッ!!!!!しかも大型哺乳類って誰!?!?」
「フルーツジャガー。」
「私はフルーツに騙されませんよ!!!ジャガーって!!!!」
「うん、こっちも警戒対象ね。」
水中にも陸地にもおぞましく生息する危険生物の数々…………別に生物が悪いんじゃない……此処は人間がお邪魔してはいけない場所だ………
「…………もう嫌や………こんな所でスープ飲まれへん…………っ」
今にも息絶えてしまいそうに細々漏らした私の隣で彼は艶のある長い髪をかき上げた
「………あのさ、俺がそんなのに殺られると思ってるの?」
「………えっ……」
気怠く皺を寄せた眉、薄い唇が言を紡ぐ
「俺は此処に沙夜子と向かうと決まった時から考え得る全てのリスクを考慮しているんだよ?」
「…………」
「だから沙夜子は何も心配しなくていい。」
彼は真っ直ぐにそれだけ言うと想像よりも大きな一口でパンを噛じった
ドキドキと高鳴る胸を止められない
つい数秒前まで目に見える全てに怯えていた私の体内には今、彼への熱い熱い想いだけが駆け巡っていた
『………あのさ、俺がそんなのに殺られると思ってるの?』
私は彼がとても強い暗殺者である事を知っている
日々鍛え抜かれた技や肉体、彼が積み上げた力は私の中で絶対的な強さの対象だ
『俺は此処に沙夜子と向かうと決まった時から考え得る全てのリスクを考慮しているんだよ?』
私は彼が慎重で思慮深い事を知っている
いつだってその頭脳の明晰さに私とはそもそも大きさのレベルで違うのかもしれないと思っている
『だから沙夜子は何も心配しなくていい。』
雰囲気こそ気怠げながらしっかりとした意思を感じる声色で伝えられた台詞