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ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編

第30章 月灯りの下









どう考えたって何もない床を凝視した後に再三ベビーベッドを確認した私はベッドの下を覗き見ながらパニックになっていた


クリクリの大きな瞳は彼に似ているけれど新生児とはとても思えない毛量の癖毛が不憫にも私似の世界一可愛い子が眠っている筈だったのに……


ランさんは本日恋人と約束があるとの事で不在なのでどう考えたって有り得ない事態だった


娘はまだ生後1週間、抱っこしていてもぐにゃぐにゃの赤ん坊だ
 

ひとりで動こうにも………………………えっ……………ゾルディック家の血統が騒いで急激に動けるようになったとかあるのか……………?!


私は混乱の余り訳の分からない事を考えたままベッドルームを飛び出してその光景に息を飲んだ




静まり返った広い広いリビングルームが月明かりに照らされて白く浮かび、その窓辺に闇を引き連れた彼が遠く夜空の星を眺めながら立っていた



その腕の中に小さな娘を抱いて



降り注ぐ月明かりに艶々の黒髪が反射していて、この世のものとは思えぬ美しさに呼吸すら忘れてしまった


少し開いたテラスの窓から潮風が香りカーテンを揺らす




「……お帰りなさい」



私の声に此方を向いた彼は透明とも黒とも取れる特有の雰囲気をそのままに「ただいま」と言った


途端に駆け寄った私をもう片方の腕でしっかり抱き止めてくれる彼の頼もしさに胸がギュッとして顔を埋める




「……私……頑張りました」




安心する香りに色々な気持ちが込み上げてくぐもった言葉


彼は長い指で私の髪を梳かしながら凛と通る声を紡いだ




「うん、頑張ったね。………沙夜子も愛菜も俺が守るよ。」





スヤスヤと小さく愛しい寝息が直ぐ側に聞こえて嬉し涙に頬が濡れる


無事に生まれた娘の名前は既に決まっていた




それは私が考えて唯一彼が「悪くないんじゃない」と言った名前だった









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