ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第29章 はじめまして
「そんな理屈が通る筈ないでしょ!イル、貴方はゾルディック家に生まれたの!貴方の血を継ぐその子は……!『この先沙夜子も子供もゾルディック家に関わる事は無いし、関わらせるつもりも無い。』
「そんな貴方の一存だけでどうこう出来る問題じゃ!『親父との話はついてる。』
………耳を疑った
いつか父親に認められたいと傷を増やす幼いあの子はいつでもその影を追い、いつか闇に飲まれて消えてしまいそうだった
小さなあの子が父親に抱いていたのは羨望と恐怖
一番近くにいたあたしだからこそ知っていた感情だった
「……話はついてるってどういう事?」
淡々と紡がれる言葉
驚く事に当主であるシルバ様はイルが一般人と交際している事を黙認していた
更に子が出来た事も報告しており、尚もゾルディックに入れる気は無いのだと
『ほら、うちって兄弟が多いし最近ミルの縁談も決まってね。そもそも期待しているのはキルアの子供だし親父はOKだってさ。ただ母親はうるさいから……』
なんて続いた言葉にイルの現状を知るのはシルバ様のみであり、更にイルが頼るならあたししかいないだろうとシルバ様も察している旨が伝わった
『つまり、ランは何の心配も無く報酬を受け取れるって訳。』
…………その話を信頼するならばあの子の子を見てみたいと思った
その後あたしは依頼通り指定のホテルへ辿り着き、遂にその時を迎えようとしている
……助産師としての歴を言うならもう何十年、あたしが取り上げた子達は皆元気に育った
また誰かの子を取り上げるだなんて思っていなかったけれど目の前で懸命に踏ん張っている姿にプロとして挑む
「何か何か美味しいお菓子………っ……名前言って!!!!!」
「パフェ!どう沙夜子ちゃん!」
全身に汗をかき痛みに耐える姿はいつ見ても感情を揺さぶられる
出産は生死をかけた大仕事
大丈夫、母子共健康よ、絶対に死なせたりしない
「うまい棒の味!!!!!っ………っ………いっぱい言って!!!」
「何それ?!知らないわ!」
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同日23時18分
ホテルの一室に産声が上がった
「おめでとう、元気な女の子よ」
と言われて胸に抱いた温もりに私もランさんもお揃いの顔で泣いていた