ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第28章 大きな手
正真正銘、恋する乙女の顔をした彼女が嬉しそうに大きな瞳を細める
「あたし恋人が出来たの」
その言葉を皮切りに私達は恋バナに花を咲かせた
あまりに幸せそうに笑う彼女を前に私まで舞い上がってしまって、2人診察台に腰掛けたまま賑やかに時が流れて行く
彼女が恋人に出会ったのは隠居後に身を置いている南の島、バーで飲んでいた彼女に一目惚れした男性に熱烈アプローチを受けたそう
「でもね、うふふ……実は私もいいなって狙ってたのよ」
悪戯に笑う彼女は何とも小悪魔的で、そりゃ彼女が1人でいれば誰も放っておかないだろうと思う
そしてそんな彼女がメロメロなのだと語る恋人がどうにも気になって写真を見せてもらうと、細身ながらガッチリとした体格、栗色の髪から覗く瞳が印象的で何処かイルミさんを思わせる風貌の男性だった
成る程………カッコいい………!!!世の中には綺麗な人が沢山いるんだなぁ……なんて思いつつ、私達の事など素知らぬ顔で未だ新聞に目を通す彼をチラリと盗み見ていると
「あたし達って男の好みが似てるのよね」
彼女はクスリと笑った
だけれどクールな見た目とは裏腹に随分可愛らしい人らしく、彼女はそんな恋人を存分に愛しながら振り回しているご様子
それに必死に付いてくる恋人が心底愛しいそうだ
「………手加減してあげてくださいよ」
「勿論、アメとムチは得意だもの!」
自信たっぷりに笑う彼女につられて笑った私達はその後も夢中でお喋りを楽しんで
「……あのさ、そろそろ帰ってくれない?」
露骨に鬱陶しそうな声色で放たれた彼の言葉に彼女は「また次の検診でね!」とウインクを残して帰って行った