ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第28章 大きな手
「身形を気にしているのだろうけど、別にそのままで構わないよ。」
なんて涼し気にカップを持ち上げる彼には何もわかっていない
彼が旦那様で私が妻
しかも旦那様は天地を揺るがす美形で、しかも破壊力抜群のVネックTシャツ装備
片や私は浮腫れ顔の寝癖ボンバーだなんてどれだけ格差があるとお思いなのだろう
えっこの人が嫁………?!?!美男と野獣だな………なんて思われるのが見え見えではないか
クソッ………ここはやはり化粧もしておきたい所………!!!
美形と結婚なんて毎日目が幸せだし心が豊かになるハッピー続きだと思っていたけれど
同時に、いつでも顔面格差と戦う勇猛果敢な戦士であらなければならないという悲しき運命を背負ってしまった
………よし、朝食は切り上げだ………
私が歴戦の戦士が如く立ち上がったと同時
部屋のチャイムは無情に鳴り響いた
「………はーい」
「…………。」
チャイムを気にする素振りも無くバサリと新聞を広げた彼を横目に潔く扉を開いた私は暫く声が出なかった
_________"
「はい、お疲れ様!」
ブロンドの髪を揺らしながら私のお腹を優しく撫でる白魚の様に美しい手
「順調よ、何も心配は要らないわ」
大きくて色香漂うグリーンの瞳が祝福する様に細められた
「ありがとうございます、ランさん!」
扉の向こう側に立っていたのは彼の元先生であり、私と激しい火花を散らしたスパイシーレディー、ランさん
あれから月日も経っているので実年齢では御歳おいくつになるかわからないが
彼女はあの時と何ら変わり無く眩しい美貌を余さず、太陽の様に笑う
その派手好きな身形に負けず劣らずの完璧なプロポーションからは想像も付かないが、彼女は私の世界で言う助産師さんのスキルを存分に有していたのだ
運び込まれた機器を容易く扱い、テキパキと……それでいて細部まで丁寧に検診事項を進める彼女は恐ろしい程にギャップがあった
だけれど「安心なさい」と私を見詰めたその瞳からは自信が満ち溢れていて、私は何の躊躇も無く彼女に身を委ねていた