ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第27章 マタニティーブルー
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私達はライトアップされたビーチが見えるテラスでディナーを取っていた
退屈だった筈のお散歩コースと化したその場所まで彼が居れば素敵なデートスポットに早変わりだ
私ひとり室内でひっそりと取っていた夕飯とはまるで違う雰囲気に簡単に舞い上がってしまう
彼はあの後私の謝罪を軽く受け流しながら彼の匂い付きタオルを量産した
彼自身の体臭がかなり薄い事は頭に無いみたいだが常人には考え付かない発想は流石だと思う
そんな彼のマーキング的な行為に胸がズキュンと撃たれる私もかなりの変態だが案外お似合いなんじゃ……?なんて自分勝手に解釈しておいた
テラスには此処彼処に設置されているランタンの灯りとカーテン越しのぼんやりした室内の明かりが差す
真っ白なテーブルクロスが潮の香りを運ぶ心地好い夜風にフワフワと揺れて
対面して座る彼が些細な所作まで上品にフォークを唇に運ぶ姿を私は何処か夢心地で見ていた
食事の合間にはまだまだ手慣れぬ私の食器の音がささやかに響いて
遠く小波の音の間にナプキンで口元を拭った彼が涼やかに視線を上げる
「暫くはこの付近で仕事だから時間に余裕があるし、夕飯は一緒に取れるよ。」
「ほんまですか!!やったぁ!!!めっちゃ嬉しいです!!」
「あと明日早速検診ね。」
「え!!例のプロですか!!!良かったぁ……嬉しい!!やったよ、チビちゃん!!!」
私達は夫婦から家族になる
彼は彼自身が父になる事をどう受け止めているのだろう
暗殺の世界で暮らす彼が小さな命を育む
ふと蘇るアパートの一室で私と同じ様に妊婦さん向けの本を完読していた彼の横顔は真剣で
そもそも面倒見の良い彼の事、きっと子煩悩な良い父になるのだろうと私の中で想像は出来ていた
「イルミさんもお父さんになるんですね」
不意に染々と漏れた私の声
彼は少し間を置いてから
「沙夜子に出会う迄は想像もしていなかったよ。」
無表情ながら何処か嬉しそうに睫毛を伏せて食事を続けたのだった