ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第27章 マタニティーブルー
「………もうっ!!いつまで留守にするつもりですか……っ!!!私………私っ………ぅぅ………っ…」
彼の心配気な瞳が私を真っ直ぐに見詰めた時
私は涙に濡れたそのタオルを彼に投げ付けていた
「ぅわ"ぁぁぁぁっ………会いたかったっ……」
きっと不細工に違いない泣き面で大泣きする私を前に、彼は避けられる筈のタオルを受けて其れでも私を真っ直ぐに見ていた
彼の瞳はいつでも真っ直ぐでその真っ黒の瞳が私は大好きだ………
私の言葉を待つ様にじっと注がれる視線があまりにも温かくて私の唇は彼にすがる様に声を紡ぐ
「不安………っなんで、す………もうずっと不安やったんです」
「初めて……うっ……来た時よりも………仕方ないって……わかってるけど…………不安で………どうしようもなくて………イルミさんに……会いたかった……っ!!」
開いた唇は止めどない
私はここ一週間で秘めていた気持ちを涙声で告白していた
…………私は只でさえ情緒が安定していないのに子を授かってからというもの散々不安定で
それを悟られまいと努めてきたつもりだった
だけど全てを見透かしている様なその真っ黒の瞳に覗かれてしまえば、途端に我が儘で甘えたな私が飛び出してしまって
しゃくり上げながらおずおずと伸ばした手は只彼がこの世に存在している事に安堵していた
私の涙声の告白は直訳すれば"不安だから傍にいて"という事で
そんな簡単な言葉を涙ながらに叫んでいる私は、彼が傍にいれば全ては何とかなるんじゃないか……なんて彼を神様か何かだと思っているのかもしれない……
何も言わずに深く息を吐いた彼は応える様に私の事を抱き締めた
サラリと艶やかな黒髪や実は男性的な首筋から鼻を擽る彼の香りはいつの時も変わりなく私の胸を締め付ける
「…………私これからどうなるんです……?」
「母親になるんだよ。」
「病院は……?」
「平気だよ、きちんとしたプロを手配してある。」
「赤ちゃん元気かなぁ……」
「鼓動が二人分響いてる、問題無いよ。」
「良かった……………良かったぁ………」
異世界にやって来てから一週間と少し、私が漸く心の底から胸を撫で下ろした瞬間だった