ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第27章 マタニティーブルー
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…………あれからまた数日が過ぎて
私は平穏を思わせる親方の回し車の音を聞きながら膨大に膨らんだ不安を和らげるのに必死だった
知らない部屋、まだ未知が広がる世界
私はそれでも母子手帳を持参していた
私は母親なのだなと不思議な気持ちになったあの時から比べると記入欄は穴だらけで
其れを見ていたら突然糸が切れた
気が付けば乱暴に開いていたクローゼット
一心不乱にリュックから私物を引っ張り出す
慣れ親しんだ私物に囲まれていれば気分が和らぐのではないかと考えるより先に
その中で私が無意識に手繰り寄せたのは何の変哲も無いタオル
使用感満載ながら水玉でフワフワのタオルは手繰り寄せたその瞬間から私の精神を支える心強いアイテムになると確信した
鼻先に寄せて瞼を閉じれば私の脳裏にはあの古びたアパートの光景が蘇る
妊婦さんは匂いに敏感になるなんて言うが、個人差はあれど私にしてみれば真実だった
私は今、鋭くなった嗅覚から安堵の場所を感じているのだ
彼が必ず隣にいてくれたあの場所こそ私の安心出来る場所で……
……………今すぐに彼に会いたい
愛しい声を聞けても、その眼差しや温もりを感じられなければ寂しくて寂しくて仕方ない
彼が隣にいてくれたなら………
彼の面影を探して開いたのは日記帳
私は彼と再会したその日から今日まで日記帳を付け続けていた
些細な幸せも喜びも本当に小さな出来事迄も、彼と過ごした時を一時も忘れない為に
私は一度後悔したのだ
彼が突然やって来たあの寒い冬の日から始めていれば良かったと
記念すべき1ページ目には彼と再会したあの日の喜びを馬鹿正直に嬉々として連ねた私の文字が並んでいて
ありありと思い出す彼の姿に胸が一杯になって遂に私は泣き出してしまった
大好きで大好きでどうしようもなくて……………だからこそこんなにも求めてしまう…………
つくづく私は欲張りだ
仕方がない状況だと理解していてその上傍にいて欲しいだなんて……
だけど、不安でどうにかなってしまいそうで
今だって彼が隣にいてくれたなら幸せで満たされている筈なのに………なんて我が儘