ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第24章 私達
本当に時が過ぎるのは早い、と目まぐるしく過ぎた日々を黙々と便座にて振り返る
トイレとは人間にとって不可欠な場所だけれどどうにも退屈な場所に違いない
私はその暇を持て余して最近の出来事だった筈の日々をぼんやりと思い出していた
去年の10月
思い出すのは彼の誕生日だ
誕生日……とは言っても正確には彼が暗殺者として暗躍し始めた日だけれど
彼が誕生日だと言うのなら、と私はパーティーを催した
アパートで二人きり……ではなく実家にてもっとアットホームな誕生日パーティー
ベタに部屋を飾り立て家庭的なご馳走を並べたテーブル
私が幼い頃に両親がそうしてくれたみたいに懐かしい雰囲気のパーティー会場には勿論私の両親と弟が参加した
慣れない雰囲気に普段より少しだけ落ち着かない様子の彼は一般家庭の誕生会に興味深そうにしていた
お調子者の弟はここぞとばかりに騒ぎ立て主役ばりにご馳走を頬張り
母や父は幼い頃の私の誕生エピソードや家族エピソードを披露した
彼は終始そんな話に相槌を送りながらも私の育った環境を噛み締めている様で
最後に出てきた平凡なケーキがシビアに切り分けられる様子までずっと目をまん丸にして見ていた
私は彼にちょっぴり良いジーンズと音読されると爆死しそうな恥ずかしいラブレターを贈った
「沙夜子の家族は賑やかだね。」
「イルミさんの家族でもあるんですよ?」
「そうだね。」
「如何でしたか、一般家庭のパーティーは!」
秋の虫が鳴く帰り道、街灯に照らされてサラリと美しい髪を揺らした彼は
「楽しかった。」
心地好い声色を響かせた